INCUDATA Magazine_000480_DX戦略とは?立案方法や成功事例などとともに解説

DX戦略とは?立案方法や成功事例などとともに解説 -

目次

多くの企業でDX推進が求められていますが、成功確率を高めるには、DX戦略を十分に練り上げた上で、戦略通りにDX推進を進めていくことが基本です。

ただ、DX戦略を立てるべき理由や立案方法を理解していないと、DX戦略を適切に描くことは困難です。また、DX戦略の成功事例を知っていれば、DX戦略を立てる際に参考になるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、DX戦略の意味、立て方やそのポイント、成功事例などについて詳しく解説します。

DX戦略とは

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ここでは、DX戦略の基礎知識について、以下の2つを解説します。

    • DXの意味
    • DX戦略の意味

それでは、1つずつ解説していきます。

関連記事:【説明できますか?】DXとは?企業がいま取り組むべき理由と成功事例

DXの意味

ここでは、経済産業省とIPAによるDXの定義を、それぞれ表にまとめます。

 

経済産業省 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
IPA AIやIoTなどの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること

DX戦略の意味

DX戦略とは、以下の通り定義できます。

自社が目指すビジョンやゴールを起点に、それらを実現するためどのようにITやデータを活用していくか、または推進していくか決めること

 

DXを推進する過程では企業の収益獲得構造の再構築やマインドチェンジが伴います。従来の手法を根本的に変える必要もあり、無計画でDXの成功はありえません。そのため、DXでビジネスモデルや企業体制の変革を起こすには、DX戦略として成功までのロードマップが欠かせないのです。

DX戦略が必要とされる理由

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ここでは、DX戦略が必要とされる理由について、以下の2つを解説します。

    • 全社的なDX推進には指針が必須
    • 手段の目的化防止

それでは、1つずつ解説していきます。

関連記事: 失敗しないDXの始め方 - デジタルによる変革を軌道に乗せる四つの基本ステップ 全社的なDX推進には指針が必須

DXは、ビジネスモデルや企業体制を変革し、新しいユーザ価値を提供するものです。しかし、その過程では様々な障害が生じます。その障害を解決するには一部の社員だけに任せずに部署を超えた全社的取り組みが必須になります。部門ごとの利害を乗り越え、全体最適を図るためには行動や判断の指針となる戦略が欠かせません。

手段の目的化防止

DX戦略がない場合は、DX自体が目的になり、変革を行った効果が十分に発揮されない恐れがあります。それを防ぐにはDX戦略を立案して、それに沿った必要な施策を適切なタイミングで行うことが大切です。

DX戦略の立案方法

INCUDATA Magazine_000480_DX戦略の立案ステップ

ここでは、DX戦略の立案方法について、以下の5つを解説します。

    • 現状把握
    • 外部環境分析
    • 改革方針策定
    • ロードマップ策定
    • 定期的見直し

それでは、1つずつ解説していきます。

関連記事:DXを成功へと導く組織と技術の戦略 - 成功のカギはチェンジ・マネジメントにあり

現状把握

まずは、DXについてどのレベルにあるか客観的に把握しましょう。これにより、戦略期間内に目指すDXのレベルや、行うべき施策が明らかになります。ここでは、デジタル・ガバナンスコード2.0から、DXのレベルを図るポイントを抜粋します。 

 

ビジョン・ビジネスモデル デジタル技術による社会及び競争環境の変化の影響を踏まえた経営ビジョン及びビジネスモデルの方向性を公表していること
戦略 デジタル技術による社会及び競争環境の変化の影響を踏まえて設計したビジネスモデルを実現するための方策として、デジタル技術を活用 する戦略を公表していること
組織づくり・⼈材・企業⽂化に関する⽅策 デジタル技術を活用する戦略において、特に、戦略の推進に必要な体制・組織及び人材の育成・確保に関する事項を示していること
ITシステム・デジタル技術活⽤環境の整備に関する⽅策 デジタル技術を活用する戦略において、特に、IT システム・デジタル技術活用環境の整備に向けた方策を示していること
成果と重要な成果指標 デジタル技術を活用する戦略の達成度を測る指標について公表していること
ガバナンスシステム 経営ビジョンやデジタル技術を活用する戦略について、経営者が自ら対外的にメッセージの発信を行っていること
経営者のリーダーシップの下で、デジタル技術に係る動向や自社のITシステムの現状を踏まえた課題の把握を行っていること
戦略の実施の前提となるサイバーセキュリティ対策を推進していること

デジタル・ガバナンスコード2.0より抜粋

外部環境分析

外部環境を分析し、自社の活動にどのような影響を与えるか予測しておきましょう。外部環境分析方法としては、例えばPEST分析が代表的です。これは、以下の表に示す4つの要素が、それぞれ自社のビジネスにどのような影響を与えるか分析することで、自社の戦略立案に活用できるものです。

 

Politics(政治) 法律や税制など
Economy(経済) 輸出入市場や競合他社の動向など
Social(社会) 世界情勢や少子化など
Technology(技術) AIやIoTなどの技術

外部環境分析は、他にも3C分析やSWOT分析などもありますので、目的やデータの種類によって、最適な方法を選択しましょう。

改革方針策定

DXは、自社のありたい姿やゴールに向けて活用すべきものです。、その思想を踏まえて、組織の強みを伸ばす、もしくは弱みを是正できるよう、DXで重点的に取り組むことを決定します。会社のリソースは有限なので、取り組むべきことややめるべきことを明らかにし、優先的にリソースを投下すべき部分を明確にしましょう。

また、重点的に取り組むことを明確にしたら、より具体的に施策や目標を決定します。戦略や具体的な施策は、収益性や価値観から自社独自の基準を設け、それによって実際に取り組むべきかどうか判断しましょう。

ロードマップ策定

DX戦略にあたって、それぞれの施策を、いつまでにやるか決定して、ロードマップ策定を行います。3〜5年後にどのような状態になっていたいか目標を定め、そこから逆算していきます。自社のDX進捗状況やリソースに応じて、ロードマップを作成していきましょう。

定期的見直し

DX戦略の計画を遂行していくうちに、社会情勢の変化などで最適な計画ではなくなってしまうことも考えられます。そのため、DX戦略は定期的に見直しを行い、想定していた未来と異なる現実が訪れていれば、必要に応じて変更しましょう。ただし、その際には納得のいく理由がないと、現場に迷いを生じさせてしまいます。

DX戦略推進を成功させるポイント

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ここでは、DX戦略推進を成功させるポイントについて、以下の2つを解説します。

    • まずはスモールスタート
    • 成功体験の蓄積

それでは、1つずつ解説していきます。

関連記事: デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例に学ぶ - 推進するメリットや成功のコツ

まずはスモールスタート

DX戦略は、一度限りではなく継続的に取り組みを行い、蓄積したデータを業務に活用することです。そのため、いきなり全社的に大規模にDXを導入するのではなく、まずは特定の分野・部署のみで、スモールスタートでDXを始めましょう。まずDXを始めるべき部署の例を、以下に示します。

    • ルーティン業務が多い部署(経理や総務など)
    • データ、テクノロジーとの親和性が大きい部署(マーケティングや営業など)
    • ほかの部署と横断して業務を遂行することが多い部署

成功体験の蓄積

DX戦略を成功させるには、DX戦略の成功体験を自社内に共有することも必要です。現場レベルで業務や組織体制の変革を進めていき、その成功体験を積み重ねていく過程で、DXが定着していきます。また、DXに成功している企業を真似るだけでなく、自社が独自にDXへの知見やノウハウを蓄積するためにも、DX戦略の成功体験を蓄積することが必要なのです。

DX戦略を成功させた事例

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ここでは、DX戦略を実現している事例について、以下の2つを解説します。

    • b8ta
    • カシオ計算機

それでは、1つずつ解説していきます。

b8ta

b8ta社の店舗では、様々な企業の試作品や新開発商品を試せます。商品を販売する会社は、b8ta社に出店料を支払いますが、その対価としてユーザがどのような反応をしたかb8ta社からフィードバックをもらえます。これは、マーケティングDXで小売店舗に「販売機能」だけでなく「オフラインマーケティングデータのフィードバック機能」を付加した一例といえるでしょう。

関連記事:マーケティングDXとは? - 実現できることから課題・推進するためのポイント・活用事例まで徹底解説

カシオ計算機

カシオ計算機では、これまで製品を家電量販店やeコマースサイトなどで販売してきました。しかし、会社が直接ユーザと関わる場面が少なく、ユーザにメッセージを直接伝え、反対にユーザのニーズを拾い上げる仕組みが無いことに課題を感じていました。そこで、DXによりユーザとの関係性を強化し、ユーザの顧客体験も向上させることを戦略として掲げたのです。

2021年4月には、カシオ計算機のバリューチェーン全体のDXを統括する「デジタル統轄部」が組織されました。ここでは、例えば以下の施策を行うこととしました。

    • オンラインショップや店舗、アプリなどで取得したユーザデータを統合管理
    • ユーザ単位での製品へのロイヤリティや購入意欲の高まり方をスコアリングして可視化
    • ユーザ一人一人の嗜好や購買意欲に応じて、最適なチャネルでのアプローチを実現

DXにより、ユーザ単位での理解を可能にし、それにもとづいたコミュニケーションや提供体験の最適化を実現しています。

まとめ

DX戦略を事前に立案することは、DXを成功させるために重要なポイントの一つです。DX戦略を立案することで、全社的な取り組みが行いやすくなる上に、テクノロジー導入自体を目的になることを防いでくれます。

「現状把握」から「定期的見直し」までの手順を正しく踏んで、DX戦略を立てましょう。また、スモールスタートから始めて、成功体験を蓄積させると、よりDXの成功確率が高まります。この記事ではDX戦略の成功事例も紹介しているので、そちらも参考にしてください。

なお、インキュデータでは、マーケティングDXに関するサポートを行っています。マーケティングDX戦略の立て方などに自信がない方は、ぜひ一度ご相談ください。

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