株式会社SBI証券 顧客データ活用によるマーケティングの変革

  

〜 国内株式個人取引シェア ナンバーワン※1のオンライン証券会社が
CDPで目指すイノベーションとは?〜

株式会社SBI証券 事例

日本のオンライン証券業界にあって競合他社を圧倒する国内株式個人取引シェア※1を堅持しているSBI証券。同社では「顧客中心主義」を普遍的な経営理念として掲げ、顧客の利益を追求したサービスの提供で、オンライン証券業界をリードし、顧客基盤を拡大させてきました。そして現在、顧客中心のビジネスモデルを支えるべく、データ活用マーケティングの促進に力を注いでいます。その取り組みについてご紹介します。

    Contents

    1.  オンライン証券業界のトップを走り続ける
    2.  顧客満足度の一層の向上を図りデータ活用に乗り出す
    3.  マーケティングの基盤・体制構築のパートナーとしてインキュデータを採用
    4.  部門横断の専任チームを組織しデータ活用マーケティングの自走に取り組む
    5.  口座開設後の取引開始率が8倍に〜現れ始めたデータ活用マーケティングの効果

    オンライン証券業界のトップを走り続ける

    株式会社SBI証券 村上 恭介 氏
    株式会社SBI証券
    マーケティング部 マーケティング企画室 課長
    村上 恭介 氏

    SBI証券は、SBIホールディングス傘下のオンライン証券会社であり、SBIグループの中核企業です。1999年10月にインターネット取引サービスを開始して以来、「顧客中心主義」を経営理念として掲げながら、「業界最低水準の手数料体系」の展開をはじめ、「豊富で良質な投資情報」「リアルタイム取引ツール」「豊富な商品ラインナップ」「取引の安全性」などによって数多くの投資家の支持を集め、日本におけるオンライン証券業界をリードしてきました。

    近年では、顧客中心主義のもと、オンラインでの国内株式取引の手数料や現在投資家が負担している一部費用の無料化を図る という「ネオ証券化」に向けて、さまざまな施策を積極的に展開。若年層を中心とした顧客基盤を拡大させています。

    結果として、SBIグループにおける証券口座開設数は950万※2を超え、2021年度においても「国内株式個人取引シェア ナンバーワン※1」の地位を堅持しています。

    顧客満足度の一層の向上を図りデータ活用に乗り出す

    上述した「顧客基盤の拡大」は、SBI証券の顧客層が、旧来からの「投資リテラシーが高く、自発的・自律的に投資を行う層」とは異なる層にも広がってきたことを意味します。それに伴い、同社はマーケティング上の一つの課題に直面することになったと、同社のマーケティング部でマーケティング企画室 課長を務める村上恭介氏は明かします。

    「ここ最近の“投資家”の傾向として、投資の初心者や若年層がかなりの勢いで増え始めていることが挙げられます。こうした層のお客さまは、自らの判断で投資対象を選り抜き、自発的・自律的に投資を行う層とは異なり、何に対してどのように投資するのが自分にとって最適かの判断に迷われることが多くあります。そのようなお客さまに最適な商品を提供するためには、個々のお客さまがどのような状況、目的のもとで投資を行おうとしているかを把握したうえで、最適な商品をお選びいただけるような詳細なマーケティング計画を立てる必要がありました」

    株式会社SBI証券 磯中 直樹 氏
    株式会社SBI証券
    マーケティング部 課長代理
    磯中 直樹 氏

    この課題を解決すべくSBI証券が志向したのが、顧客の属性データや行動データの分析によって個々のお客さまに対する理解を深め、それにもとづいてマーケティング施策のPDCAサイクルを回すという「データ活用マーケティング」の実現です。これにより、マーケティング施策の常時最適化を図り、顧客にとって価値ある情報を提供することで、商品を選んでいただく。その結果として顧客のLTVを最大化することも目指しました。

    そこでSBI証券はまず、社内の各システム(データソース)に分散する顧客データを収集・統合して一元管理し、マーケティング施策に活用するための基盤を探しました。結果として採用を決めたのが、トレジャーデータのカスタマーデータプラットフォーム(Customer Data Platform:CDP)「Treasure Data CDP」です。

    同社では「口座開設」や「国内株式」「外国株式」といった事業部門ごとにマーケティング組織がありますが、共通して使用できるデータ活用基盤はありませんでした。そのデータ活用基盤を構築することで、マーケティング組織がお客さまへ最適な商品を提供するための環境を整えようと考えたのです。

    「Treasure Data CDPは顧客データの収集、統合、分析、そして施策実施の機能があり、企業のマーケティングに必要な顧客理解、顧客体験の最適化を支援するクラウドのデータ基盤です。なかでもWebサイトやスマートフォンアプリ、販売管理システムなど、さまざまなデータソースから、顧客の行動データと取引データの収集やマーケティングツールと連携するためのコネクタ類が充実しています。こうしたシステムならば、マーケティング組織全体が活用するための基盤が構築しやすいと判断しました」(村上氏)

    マーケティングの基盤・体制構築のパートナーとして
    インキュデータを採用

    SBI証券がTreasure Data CDPの採用を決めた理由は、もう一つあります。インキュデータの提案を選んだ経緯について、村上氏は次のように振り返ります。

    「データ活用基盤の構築に際しては、インキュデータを含む数社からの提案を比較検討の土俵に乗せました。そのなかでTreasure Data CDPをマーケティング基盤として提案してきた会社は他にもありましたが、同社の提案を選択した理由は、それがデータ活用基盤の構築支援のみならず、データ活用を見据えた戦略策定と組織体制が考えられていました」

    村上氏はまた、次のような説明を加えます。
    「インキュデータが、他のソリューションプロバイダーと異なるのは、データ活用基盤構築においてTreasure Data CDPの導入実績が豊富であると同時に、データ活用における戦略・戦術の策定に精通したコンサルティングファームである点です。データ活用基盤の構築は、ビジネス上のニーズや目的を反映したものでなければなりません。実際、インキュデータの提案には、データ活用によって何を目指すべきなのか、その目標を達成するためにどのような体制を築く必要があり、その実現に向け、どのようなステップを踏む必要があるかが明確に示されていました。その提案内容は十分に納得できるものであり、データ活用マーケティングの目標設定から体制構築までをしっかりと支援してもらえるとの期待が持てました」

    さらに村上氏はこうも続けます。
    「当社のマーケティング担当者は、商品については精通していても、データを活用したマーケティングに関する実務経験を有してはいませんでした。そのため、基盤構築後における施策運用のフェーズにおいても、データを使い、お客さまにどうアプローチすべきかに関するインキュデータの知見が有効に活用できると考えました」

    部門横断の専任チームを組織し
    データ活用マーケティングの自走に取り組む

    インキュデータをパートナーとして採用したSBI証券は、インキュデータによる支援のもと、データ活用基盤の構築を進めるのと併せて、データ活用マーケティングの構想策定や目標設定、さらには体制づくりに取り組みました。具体的にはまず「データ活用マーケティングのあるべき姿」を描き、その実現に向けて「データ・マーケ基盤」「組織・オペレーション」「顧客・マーケティング」の3軸での取り組みを推進したのです(図1)。

    図1:データ活用マーケティングのあるべき姿に向けた取り組み
    図1:データ活用マーケティングのあるべき姿に向けた取り組み

    図1にあるとおり、3軸の取り組みにおける「①データ・マーケ基盤」では、Webデータ(顧客のWebサイト上での行動データ)と顧客との取引データを統合して顧客データ統合の基礎を構築し、活用中のマーケティングツールとの連携を図りました。また、「②組織・オペレーション」については、各部から有望な若手を集めた「部門横断のマーケティング専任チーム」を「SWATチーム※3」として結成し、インキュデータによるハンズオン形式のトレーニングを受けてもらう取り組みを展開。「③顧客・マーケティング」では、商品部門を横断した、顧客特性に合わせた形でのコミュニケーション戦略・具体施策を策定・実行しました。

    このうちSWATチームは、マーケティング組織がデータ活用マーケティングの自走化に向けた育成組織です。

    「SWATチームの取り組みは、当社におけるマーケティング組織の文化(仕事のやり方、進め方)として定着させる試みでした。それによって目指すべきことの一つは、社内のすべてのマーケティング担当者が、お客さまのデータと日々向き合いながら、施策のPDCAサイクルを効率的に回し、施策の実効性を速やかに上げられるようになることです。SWATチームは、その実現に向けた実践教育(OJT)の場といえます(図2)」(村上氏)

    図2:SBI証券において組織されたSWATチームのイメージ
    図2:SBI証券において組織されたSWATチームのイメージ


    初期のSWATチームに参加したマーケティング担当者は、インキュデータの人員による伴走支援を受けながら、データ活用基盤に日々蓄積されていく顧客データにもとづいて施策の計画を立て、顧客セグメントを作成。そしてターゲットを絞り込み、その特性に合わせた施策を打ち、PDCAサイクルを回していくといったデータ活用マーケティングの業務プロセス(図3)を体得したのです。

    図3:データ活用マーケティングにおける業務プロセスのイメージ
    図3:データ活用マーケティングにおける業務プロセスのイメージ

    また、SWATチームのメンバーは、体得したノウハウを社内(マーケティング部門)に伝搬していく役割も担っています。

    こうしたSWATチームについて、村上氏は次のような説明を付け加えます。
    「すでに最初に組織された当社のSWATチームメンバーは、マーケティング施策を自分で計画し、運用していけるスキルを身に付けています。チームの組織化によってデータ活用マーケティングを自走化できる体制が着実に整いつつあるといえます」(図4)

    図4:データ活用マーケティングに関するスキルレベルを測る指標例
    図4:データ活用マーケティングに関するスキルレベルを測る指標例

    さらに、SWATチームに参加したマーケティング部課長代理の磯中直樹氏は、チームに対するインキュデータの貢献について次のように評価します。

    「私を含めて、当社のマーケティング担当者は、自社の商品をどうお客さまに説明し、お勧めすべきかわかっていても、データ活用マーケティングについては実務経験がありませんでした。例えば、顧客体験の設計(カスタマージャーニー)をどう描き、お客さまに対して何をどう訴求すべきか、どのような情報をどういった方法で届けるべきかといった基本的なところからSWATチームの活動を通じて、私はインキュデータの知見を吸収させてもらいました。伴走 支援のおかげで、これからのマーケティングのあるべき姿が実感としてとらえられるようになったと感じています」

    口座開設後の取引開始率が8倍に
    〜現れ始めたデータ活用マーケティングの効果

    SBI証券がSWATチームを組織し、データ活用マーケティングに実質的に乗り出してから、まだそれほどのときは経過していません。ただし、SWATチームを中心にすでに相応の成果を上げ始めています。

    例えば、口座を新規に開設した顧客について、その行動データや属性情報にもとづいてセグメント分けし、それぞれの特性に合わせたマーケティング施策を打つようにしたところ口座開設後の取引開始率が従来の約8倍に跳ね上がるという成果が上がっています。また、他の商品訴求施策でも従来の10倍の効果を出したケースもあります。

    こうした成果に対して村上氏は「マーケティング施策に対して予想を大きく超える反応が得られるセグメントがあることが判明しました。それがわかったことは、データ活用マーケティングに乗り出した大きな成果といえるでしょう」と指摘します。

    もっとも村上氏は、これらの成果よりも、インキュデータによる伴走支援を通じて、顧客ニーズを起点に物事を考えてマーケティング施策を打つことの大切さに気づけた効果のほうが大きいとし、Treasure Data CDPを活用した同社のデジタルマーケティングの伸長にも期待を寄せます。

    「インキュデータには当社のビジネス上のゴールに沿ってデータ活用マーケティングのゴール(あるべき姿)をどう描くかというスタート地点から支援してもらい本当に助かりました」(村上氏)

    さらに、村上氏は、自社におけるデータ活用マーケティングの今後についてこう展望し、話を締めくくります。
    「インキュデータの支援もあり、データ活用マーケティングの重要性、必要性に対する社内の理解は深まりつつありますが、それが社内に完全に定着しているわけではありません。ただし、マーケティングのあるべき姿の方向性は間違いなくデータ活用マーケティングやデータを使ったOne to Oneマーケティングにあると見ています。ゆえにこれからも、顧客データの分析からマーケティング施策の実施までの一連のプロセスを、あらゆる顧客との接点(タッ チポイント)でスムーズにつなげられるようにし、社内のすべてのマーケティング担当者が、自分たちで考えた施策を実行できるような姿を理想として追求していきたいと考えます。また、当社が保有するような膨大な顧客データを使って、そのようなマーケティングが展開できることは、やりがいのある醍醐味に溢れた仕事です。その意味で、今回のプロジェクトを通じて、データ活用マーケティングに興味がある、ないしは、携わってみたいと考える若い人材が 活躍できる場が整いつつあると感じています」

    •  2022年3月期通期。委託個人売買代金シェアのSBIグループにはSBIネオトレード証券を含む。東証統計資料や各社Webサイトの公表資料に基づいて、SBI証券が集計。
    •  証券口座開設数の数値はSBIネオモバイル証券、SBIネオトレード証券、FOLIOの口座数を含む。
    •  SWATチームは、一般に米国警察の特殊部隊のことを指すが、本プロジェクトでは社内に対し、マーケティング部門が何か面白そうな取り組みをしていることをアピールするためにこの名称を採択した。
    •  インタビューにお答えいただいた方の部署、役職名は取材当時のものです
    •  会社情報は取材当時のものです
    •  記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です