オムニチャネルとは? - メリット・デメリット・成功のポイントや導入事例までまとめて解説 -
近年、消費者行動が多様化し、オンライン上でも消費者と商品との接点が増えた反面、会社側にとってはこうした消費者行動の多様化に対応しなければビジネスチャンスを失う恐れがあります。そこで誕生したのが、オムニチャネルです。オムニチャネルにより、顧客満足度向上や細やかな顧客分析が可能になります。
オムニチャネルのデメリットや成功のポイントをさらに理解したいと考える方もいるでしょう。
そこでこの記事では、オムニチャネルを理解するための基礎知識やデータ基盤構築に用いるツールの選定ポイントなどについて詳しく解説します。
オムニチャネルとは?
ここでは、オムニチャネルの基礎知識として、以下の3つを解説します。
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- オムニチャネルの意味
- オムニチャネルがなぜ注目されているのか?
- オムニチャネルの類語
それでは、1つずつ解説していきます。
オムニチャネルの意味
オムニチャネルは、店舗やECサイトなど、オンライン・オフライン問わず、さまざまなメディアで顧客と接点を作り、購入に導く戦略のことです。購入経路を意識させずとも販売促進につなげる戦略で、顧客にとっては利便性が向上し、商品の販売機会も増える可能性があります。なお、「オムニ」はラテン語が語源で、「あらゆる、すべての」を意味します。
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オムニチャネルがなぜ注目されているのか?
オムニチャネルが注目されている背景には、スマートフォンの普及があります。スマートフォンが普及したことで、多くの人が場所を問わずインターネットに接続できるようになり、消費者行動が多様化しました。具体的には、販売チャネルが実店舗だけでなく、ECサイトや自社アプリなど複数できた上に、商品情報の検索やショップの比較も容易になりました。これにより、オムニチャネルでの顧客満足度向上が必要となったのです。
オムニチャネルの類語
ここでは、オムニチャネルの類語を4つ解説します。
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- マルチチャネル
- クロスチャネル
- O2O
- OMO
それでは、1つずつ解説していきます。
マルチチャネル
マルチチャネルは、複数の販売チャネルを用意することです。ただ、チャネル同士は独立していて、連携が取れていません。
クロスチャネル
クロスチャネルは、各販売チャネルを連携させて、顧客情報などを共有するものです。ただ、オムニチャネルと違い、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取るなどシームレスな対応はできません。そのため、クロスチャネルをさらに発展してシームレスにしたものが、オムニチャネルといえるでしょう。
O2O
O2O(Online to Offline)は、オンラインからオフラインに顧客を誘導するマーケティング手法です。オムニチャネルでは、あくまで複数のチャネル間の境をなくしただけで、顧客の誘導は行っていません。しかし、O2Oでは顧客の誘導を行っていることが、オムニチャネルとの違いです。なお、オフラインからオンラインに顧客を誘導するマーケティング手法は、逆O2Oと呼びます。
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OMO
OMO(Online Merges with Offline)は、オンラインとオフラインの併合システムです。オフラインに存在する食品などの商品を、オンライン上でデータ管理します。これにより、消費者が商品購入まで行うプロセスをスマートフォン上で完結できるなど、新たなユーザ体験を提供してくれます。
オムニチャネルのメリット
ここでは、オムニチャネルのメリットとして、以下の3つを解説します。
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- 顧客満足度向上
- 細やかな顧客分析
- 機会損失防止
それでは、1つずつ解説していきます。
顧客満足度向上
オムニチャネル化を進めることで、顧客満足度向上を期待できます。例えば、ECサイトで購入した商品を実店舗で送料無料で受け取ることが可能になります。このように、オムニチャネルで顧客の利便性を上げることで、顧客が会社に抱く印象がよくなるため、顧客満足度が向上するのです。
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細やかな顧客分析
オムニチャネル化を進めることで、オンライン・オフライン双方で顧客データを収集し、分析できるようになります。例えば、商品にQRコードをつけている店舗が増えています。QRコードを撮影することで、顧客は商品情報などを取得可能です。一方、会社側にはどの顧客がどの商品に興味をもっているか、あるいは検討したが購入しなかったといった定量データが取れます。購入金額が高かったり、購入頻度が高い優良顧客も把握できます。また、複数のチャネルで得られた行動データを統合し、より深く顧客のニーズを把握・理解することも可能になるでしょう。
機会損失防止
販売チャネル同士を連携させて、CRMやCDPなどで統合的に管理できるようにすることで、機会損失防止が期待できます。例えば店舗で、ある商品を買いたいと考えている顧客がいたとします。しかし、顧客の目当ての商品が店舗になければ他店に流れてしまい、機会損失が発生します。一方、店舗で購入できなくとも自社のECサイトで購入できる仕組みを作れば、より良い顧客体験を提供することで全社的には顧客を逃さずに済むのです。
オムニチャネルのデメリット
ここでは、オムニチャネルのデメリットとして、以下の3つを解説します。
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- チャネル間連携が必須
- 初期コストが必要
- すぐに効果は出ない
それでは、1つずつ解説していきます。
チャネル間連携が必須
複数のチャネルが存在しても、連携が取れていなければオムニチャネルは成功しません。例えば、今まで店舗で購入していたユーザが、ECサイトで購入するようになることが考えられます。すると、自社内で店舗とECサイトとで、ユーザを奪い合うことになりかねません。そのような課題が生まれないように、チャネル間の連携が欠かせないのです。
初期コストが必要
例えば、販売チャネルが一つしかない場合は、販売チャネルを増やす必要があります。また、複数の販売チャネルをすでにもっている場合でも、チャネル同士を連携させる必要があります。チャネル同士の連携を行うための初期コストが必要になるので、予算と人的リソースを確保して初期コストを回収する道筋をつける必要があるでしょう。
すぐに効果は出ない
オムニチャネルは、顧客の利便性が向上するサービスを提供することで、顧客満足度を向上させて顧客ロイヤリティを向上させる手法です。また、顧客とは長期的な付き合いを目指しているためすぐに効果が出るものではありません。一方で、スモールステップでも顧客にとって利便性が高まる施策を継続的に打っていくことにより、徐々にロイヤリティを高めることが可能です。。
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オムニチャネル成功のポイント
ここでは、オムニチャネル成功のポイントとして、以下の4つを解説します。
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- ロードマップ作成
- カスタマージャーニー整備
- 社内体制整備
- 社内システム整備
それでは、1つずつ解説していきます。
ロードマップ作成
オムニチャネルを導入する前に、まずはロードマップ作成を行いましょう。オムニチャネルは、全社一丸となって実施しないと成功しません。自社の環境分析を十分に行い、オムニチャネル導入・運用の目的や必要なタスク、スケジュールや役割分担を明確化して全社で共有する必要があります。それには、ロードマップ作成が有効なのです。
カスタマージャーニー整備
オムニチャネルを成功させるには、ユーザ行動に沿ったチャネルと、それぞれのチャネルにおける施策を行うことが必要です。そのためには、カスタマージャーニーの整備が必要になります。カスタマージャーニーをもとに、顧客はどのチャネルを、どのタイミングで用いるか推測できます。カスタマージャーニーを整備し対策を講じることにより、オムニチャネルの効果を最大化できるでしょう。
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社内体制整備
オムニチャネルを成功させるには、部署ごとに連携を十分に取る必要があります。しかし、セクショナリズムが強い組織では、連携がうまくいかず、オムニチャネル成功の支障になりかねません。組織の抜本的見直しを行い、会社全体の意思統一を図ることが重要なのです。
社内システム整備
オムニチャネルを成功させるには、社内システムの見直しも必要です。商品情報や購入履歴など、各チャネルの全データを統合・一元管理できるようにデータの収集方法を変えるシステムが必要になります。オムニチャネルでシームレスな顧客対応を実現するには、情報の統合が前提です。そのため、社内システム整備でデータ連携・統合・蓄積を行うことがオムニチャネル成功の根幹ともいえるでしょう。
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オムニチャネルの導入事例
ここでは、オムニチャネルの導入事例として、以下の2つを解説します。
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- ショッピングセンター
- 化粧品メーカ
それでは、1つずつ解説していきます。
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ショッピングセンター
このショッピングセンターでは、複数のオムニチャネル施策を導入しています。例えば、自社アプリで食品売り場のPOPを撮影すると、その食材を使ったおすすめのレシピを検索できます。また、店内のタッチタブレットを使って、店舗で取り扱われていない商品の検索も可能です。タブレット上で見つけた商品は、店舗のレジで代金を支払い、配達サービスで自宅まで届けてもらうこともできます。
化粧品メーカ
この化粧品メーカでは、自社の美容Webサービスと、リアルの店舗を用いたオムニチャネルを展開しています。例えば、Webサービス上で肌のセルフチェックを行うと、化粧方法の提案やおすすめ商品の紹介を行ってくれます。また、希望者には対面でコンサルタントに相談することも可能です。
まとめ
オムニチャネル化を進めることで、顧客満足度向上や機会損失防止などの効果が期待できます。ただ、チャネル間連携が必要な上、初期コストや社内システム整備も必要になってくるため、全社で協力して適切なオムニチャネル導入・活用を推進しないと成功しません。今後より一層、消費者ニーズが多様化していく中で、マーケティング戦略におけるオムニチャネル化の重要度が高まっていく可能性があるといえるでしょう。