ジョブ理論のフレームワークを活用するには?基本概要から進め方・流れも解説 -
サービス開発や既存の商材の改善によって安定して売り上げを伸ばしていくためには、顧客が製品を選択する背景を理解する必要があります。そこで役立つのが、ジョブ理論です。ジョブ理論を活用することで、顧客がどのようなことを達成したいか整理できるため、顧客のニーズに対する理解が深まるでしょう。
そこで本記事では、ジョブ理論をフレームワークで進める方法や、ジョブ理論に基づくフレームワークを解説します。
ジョブ理論とフレームワークの基礎知識
ここでは、ジョブ理論とフレームワークの基礎知識として、以下の4つを解説します。
-
- ジョブ理論の定義・ジョブ理論の必要性
- ジョブ理論を構成する「ジョブ」
- フレームワームの意味
それでは、1つずつ解説します。
関連記事:戦略立案に有効なフレームワーク10選を使いこなすポイントとともに解説!
ジョブ理論の定義
「ジョブ理論」とは、顧客が製品やサービスを選ぶ背景を解明する考え方です。ここでいう「ジョブ」とは、「ある状況で人が実現したいと考える進歩」のことです。顧客を雇い主と見立て、ある目的を達成するために、従業員として製品・サービスを雇うことをイメージしてください。
ただ、「本当はやりたくないがやらねばならないジョブ」もあり、必ずしも顧客が「やりたい!」と思っているとは限らないことに留意しなければなりません。ジョブ理論は、顧客の購買意欲や商品の差別化に関するヒントを引き出すのに役立ちます。クレイトン・M・クリステンセン教授(ハーバード・ビジネス・スクール)が提唱し、イノベーションの立ち遅れを解決する手法として注目され、今や世界中の多くの企業で活用されるようになりました。
同氏は自身の著書で、お金や人材などのリソースがそろっているはずの大企業がイノベーションを起こせず、新興企業に負けることを「イノベーションのジレンマ」と呼びました。そして、大企業がイノベーションを進めるためには、既存サービスの改善だけでなく自ら積極的に革新的な技術を取り入れる必要があると指摘しています。そのため、ジョブ理論は、企業側の視点からイノベーションを促進する方法に焦点を当てていることが特徴です。
ジョブ理論の必要性
ジョブ理論の必要性は、「イノベーション」の重要性が向上したことで増大しています。現代社会は技術の進歩により、外出せずにさまざまなモノを購入でき、スマートフォン1つでさまざまな情報を調べられるなど、利便性が向上しました。、ただし、利便性の反面、ジョブを達成するための方法が複雑化し、どうすればジョブを達成できるかわかりづらくなっています。そのため、顧客が達成したいジョブを満たすため、イノベーションを生み出して事業を展開することが重要になってきました。また、そもそも顧客がどのようなジョブを達成したいのか明確にするために、ジョブ理論が重要になっています。
ジョブ理論を構成する「ジョブ」
ここでは、ジョブ理論を構成する「ジョブ」として、以下の3つを解説します。
-
- 機能的ジョブ
- 社会的ジョブ
- 感情的ジョブ
それでは、1つずつ解説します。
機能的ジョブ
機能的ジョブは、商品やサービスの機能を用いて達成するものを指します。例えば、「コーヒーで眠気を覚ます」や「コーヒーで喉をうるおす」など、コーヒーの機能を目的としたジョブが機能的ジョブの一例です。
社会的ジョブ
社会的ジョブは、「自分は周りからこう見られたい(見られたくない)という周囲から自分に対する認知・承認の達成を実現」するためのジョブです。例えば、お気に入りのカフェでくつろぎ、周りの人から「おしゃれな人」、「余裕のある生活をしていそう」と思われたい人は、社会的ジョブをもっています。ここでは、コーヒーそれ自体の効果は直接的には関わっていないことが、機能的ジョブと異なる点です。
感情的ジョブ
感情的ジョブは、「自分自身が感じたいこと」を達成するジョブであり、他者を意識した社会的ジョブとは異なります。例えば、「コーヒーを飲むことで、さわやかな気分になりたい」など、あくまでも自分の気持ちにフォーカスしたジョブが感情的ジョブです。
ジョブ理論をフレームワークで進める流れ
「フレームワーク」は、以下に代表される各種場面においてのシーンで役立つ思考の枠組みです。
ビジネスの課題解決
目標設定
アイデア出し
情報整理
意思決定
マーケティングに限らず、あらゆるビジネスシーンにおいて、思考の手助けになります。
ここでは、ジョブ理論をフレームワークで進める流れとして、以下の6つを解説します。
-
- 顧客の特徴を把握
- 商品利用時のストーリーを整理
- 特定の状況で達成したいジョブを明確化
- 利用されない場合の理由や対策を整理
- ジョブの完了と言える条件を整理
- ジョブの解決策を明示
それでは、1つずつ解説します。
関連記事:マーケティング活動で重要な顧客理解を深める方法やフレームワークを解説!
顧客の特徴を把握
新規事業を興す場合でも、既存事業を改善する場合でも、ジョブ理論を利用するためにはまず顧客の特徴を把握することが必須です。ペルソナの属性や行動を調査し、顧客が抱える課題を分析しましょう。最低限、コア機能となるジョブは把握しておきたいところです。定量的なデータだけでなく、定性的に表される要望もジョブ把握に役立ちます。特に、何らかの理由や支障があり、本来達成したいジョブに向けて行動を起こさない、あるいは行動を起こせない無消費の状態に陥っているターゲットを見つければ、大きなマーケットの創出につながる可能性もあるでしょう。
商品利用時のストーリーを整理
顧客の状態や顧客が持ち得るジョブを把握したら、製品やサービスを利用する場合のストーリーを作ります。ペルソナの行動特徴に基づいて、購入から活用までのシーンをシミュレーションしましょう。利用する時間帯やシチュエーションが分かれば、ストーリー作成が容易になります。ジョブ理論では、製品やサービスの価値は、購入でなく実際に活用されるかで決まることを強調しています。
特定の状況で達成したいジョブを明確化
顧客のコア機能的ジョブや行動特徴からシミュレーションし、より細かくジョブを特定します。例えば、「音楽を聴く」というジョブにおいても、状況によって片付けたい用事※が異なります。
※その製品・サービスを使って解決したい課題
例えば、アプリで音楽を聴く人の多くが「普段と同じやり方で音楽を聴く」ジョブを持っていれば、「アプリを通じた音楽配信」がソリューションになりますが、「アーティストを身近に感じたい」「特別な空間で聴いてみたい」といったジョブを持っている場合は別のソリューションを提供することが考えられます。自社サービスを利用してほしい顧客が、どのような状況下で達成したいジョブなのかを見極める必要があります。
利用されない場合の理由や対策を整理
ジョブ理論を使う際には、「雇用されない理由(=製品・サービスが購入されない理由)」をあらかじめ洗い出して対策しなければなりません。例えば、人材採用のケースで検討してみましょう。従業員を雇いたくても、求めるスキルを持っている人でなければ採用しないはずです。同様に、ビジネスにおいても顧客が求める機能や効果が期待できない商品だと判断されれば、購入はされません。。例えば、いくら高機能で手軽に購入できる価格帯の軽自動車を販売していても、7人家族が全員で一緒に乗ることができる自動車を探している顧客に購入してもらうことは非常に難しいでしょう。逆に、7人が全員一緒に乗車でき、価格など他の面でも比較優位性がある自動車であれば購入される可能性が十分にあるといえます。。ペルソナの特徴に基づいて利用されない理由を特定し、解消策を整理しましょう。
ジョブの完了と言える条件を整理
顧客が自社のサービスを選択したとしても、本来抱いていたジョブが解決されなければ、これは成功とは言えません。ジョブ完了とみなせる条件をリストアップし、ターゲットの全てのジョブを考慮して、何をもって完了とみなせるのかを決定しましょう。具体的な条件を設定することが、最適なソリューションの提供に欠かせません。
ジョブの解決策を明示
ペルソナの特徴やストーリー、特定状況下でのジョブや完了条件を決めたら、解決策を定義しましょう。どれが最適なソリューションか、そのソリューションを阻害する要因はないか、十分に確認しなければなりません。フレームワークを活用し、ジョブの解決策を見出すと効率的です。ソリューションによるサービス改善後も、定期的なアンケートや分析による継続的な顧客体験向上を図りましょう。
ジョブ理論の代表的なフレームワーク
ここでは、ジョブ理論の代表的なフレームワークとして、以下の2つを解説します。
-
- JOBSメソッド
- ジョブマップ
それでは、1つずつ解説します。
関連記事:顧客データとは? - 収集・分析・活用方法や活用事例までまとめて解説
JOBSメソッド
JOBSメソッドは、INDEE Japan社がクリステンセン教授の理論をもとに考案した、日本企業向けのジョブ理論の方法です。顧客の特徴・行動観察から始め、インタビューや行動観察によって状況をさらに把握します。そして、以下に示す4つの着目点より顧客状況を分析し改善を繰り返すことで、顧客の真の望みを実現するものです。
J(Job:ジョブ) | 顧客の機能的、感情的、社会的課題 |
O(Objectives:目的) | 課題の背景にある目的 |
B(Barriers:障害) | ジョブを達成困難にする要因 |
S(Solutions:代替解決策) | 現在顧客が課題解決のため用いている製品(使い方) |
ジョブマップ
ジョブマップは、顧客がジョブを遂行する行動を段階分けし、視覚的にわかりやすく表現したフレームワークです。フェーズは以下の8つで、それぞれの工程を洗い出し、達成に向けたプロセスを整理します。また、現状どのフェーズにいるのか、そしてフェーズごとにどのような課題があるのか分析することで、問題点や改善点を見出せるでしょう。
1 | 定義(Define) | 何かを実現するため、目的と計画を決める |
2 | 収集(Locate) | 目的達成に向けて情報を収集する |
3 | 準備(Prepare) | 2で得た情報をもとに、ジョブを片付けられる環境を整える |
4 | 確認(Confirm) | ジョブの解決ができる状態になったか確認する |
5 | 実行(Execute) | 準備してきたことを開始・提供する |
6 | 観察(Monitor) | 実行したことが正しく実行されているか評価を行う |
7 | 修正(Modify) | 実行したことの修正や改善、変更を行う |
8 | 完了(Conclude) | プロジェクト完了、または繰り返す準備を行う |
まとめ
本記事では、ジョブ理論をフレームワークで進める方法や、ジョブ理論に基づくフレームワークを解説しました。「ジョブ理論」の「ジョブ」は、「ある状況下で、人が実現したいと思う進歩」です。また、「ジョブ理論」は、その「ジョブ」に基づき、顧客が製品・サービスを選ぶ背景を解明する理論です。
ジョブ理論で顧客に商品が選ばれる背景を解明するには、顧客の特徴把握からジョブの解決策明示までを行わなければなりません。しかし、拠り所なしにそれら一連の作業を行うことは困難なので、本記事で紹介したJOBSメソッドやジョブマップなどのフレームワークを活用するとよいでしょう。
なお、インキュデータでは、マーケティング分野での分析・戦略策定について豊富なノウハウを有しています。ご興味がありましたらぜひ一度ご検討ください。
関連記事:コンサルティング