DXの具体的な進め方を7ステップで解説! -
更新日: 2023年2月20日
現在、世界中の多くの企業では、DXによる事業変革が求められています。日本もその例外ではなく、DX推進によって新たな顧客体験の提供を目指す会社は珍しくありません。
ただ、DXを進める際には、正しい進め方を理解した上で遂行しなければ期待した効果を得られない可能性が高まります。また、DXを進めるにあたっては、さまざまなな要点があります。それらの要点を理解すれば、よりDXが成功する可能性が高まるでしょう。
そこでこの記事では、DXの具体的な進め方を7ステップで解説するとともに、DXの進め方の要点についても詳しく解説します。
DXの進め方を理解するための基礎知識
ここでは、DXの進め方を理解するための基礎知識について、以下の3つを解説します。
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- DXの定義
- DXのメリット
- DXの課題
それでは、1つずつ解説していきます。
関連記事:DXとは何か?必要な理由や推進のポイント・導入事例などを解説
DXの定義
DXの定義は、世界一律で決まっているわけではありませんが、ここでは経済産業省とIPA(独立行政法人 情報処理推進機構 )による定義を、それぞれ紹介します。
経済産業省 | 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービスビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織・プロセス・企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること |
IPA | AIやIoTなどの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう将来のビジネスや組織を変革すること |
- 出典:デジタルガバナンス・コード2.0 | 経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf
- 出典:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査 ~報告書本編~ | 独立行政法人 情報処理推進機構 https://www.ipa.go.jp/files/000073700.pdf
DXのメリット
DXのメリットは、新たな顧客体験の提供による競争優位性の獲得にあります。データを一元管理し、顧客を理解することを起点に考えることで、既存事業やサービス、組織体制の課題が明確になります。また、それらの課題に取り組むことで、より深化した新たな顧客体験を提供できるでしょう。その結果、顧客満足度向上だけでなく、新たな価値創出や収益基盤強化にもつながるはずです。
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DXの課題
DXを進めるにあたっては、様々な課題が存在します。主な課題を3つ表にまとめました。
社内体制の整備 |
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目的・目標設定の明確化 |
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DX人材の確保と育成 |
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- 出典:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査 ~報告書本編~ https://www.ipa.go.jp/files/000073700.pdf
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DXの進め方を7ステップで解説
ここでは、DX推進を成功させる手順について、以下の7つを解説します。
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- 目的・ビジョンの設定
- 経営層のコミット
- DX戦略立案
- 顧客体験シナリオ策定
- 業務ワークフローの最適化・ITの活用
- より深い顧客体験の提供
- 継続的な見直し
それでは、1つずつ解説していきます。
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目的・ビジョンの設定
DXを進める前には、まずは企業がユーザにどのような価値を提供できるか目的・ビジョンを設定しましょう。DXでどうビジネスモデルや組織体制を変革し、どうやって競合他社との競争優位性を保てるか、明確にします。
経営層のコミット
DXを進めるためには、経営層が主体的に取り組む必要があります。また、DXではビジネスモデルや企業体制の変革が行われます。その際には、既存事業の縮小や、人員・リソースの配置転換などが発生するため、ハレーションが発生する可能性も否めません。そのため、経営層がリーダーシップを積極的に取り、DX推進に必要な人員配置や予算確保などを行っていくことが必要なのです。
DX戦略立案
DX推進の目標・ビジョンと、会社の現状や課題を照らし合わせ、DXを進める具体的戦略を立案します。その際には、ロードマップなどを作成し、時間軸を取り入れて具体的な計画を策定しましょう。また、経営層にも積極的に戦略立案に参加してもらい、目的や進め方を経営層とも共有することが必要です。
顧客体験シナリオ策定
DX戦略に基づき、理想の顧客体験シナリオを策定します。その際には、マーケティングや顧客サポートなど、関係各部署から意見を集約し、さまざまなアイデアを共有しましょう。理想の顧客体験シナリオと現状を比較することで、目下不足している部分や課題が明確になります。また、理想の顧客体験を提供する取り組みの方針を整理し、実現性や業務へのインパクトを踏まえて、具体的アクションプランを策定しましょう。
業務ワークフローの最適化・ITの活用
単なるアナログのデジタル化ではなく、DXで提供したい価値を実現すべく、DXの目的やビジョンから業務フローを最適化し、ITを活用して効率や正確性を向上させましょう。戦略やアクションプランから業務最適化の優先順位を決定します。その際には、以下のポイントに注意しましょう。
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- DX戦略を実現するため一貫性があるIT基盤を構築する
- 顧客の状況やニーズをデータから把握する仕組み(顧客接点の見直しなど)を構築する
- データの取得や分析にあたり、IT基盤を戦略的に活用する
- データから得られた知見をもとに意思決定する文化を形成する
より深い顧客体験の提供
デジタル基盤を整備したら、顧客満足度向上を目指し、IT技術を活用してより深い顧客体験の提供や、マーケティングのデジタライゼーションを推進します。また、デジタル技術で既存事業の強みを強化することで顧客満足度向上を目指すとともに、新たな領域を開拓することも必要です。
継続的な見直し
DX施策を進めていき、初期の目的が達成されても、社会情勢の変化や技術革新が発生し、永続的に成功するとは限りません。企業内でデータを活用する文化や仕組みを起点にして、継続的にDX施策の見直しを行い、市場や社会環境の変化に対応していきましょう。場合によっては、新たなテクノロジーやツールの導入も検討する必要があります。
DXの進め方の要点
ここでは、DXの進め方の要点について、以下の10点を解説します。
- 経営戦略・ビジョンの設定
- 経営層の積極的な参加
- プロジェクト体制整備
- 的確な意思決定
- 変化への速やかな対応
- 全社的なシステム構築体制
- ガバナンス制定
- 各部門のオーナーシップ
- IT資産の評価
- IT資産の仕分け
それでは、1つずつ解説していきます。
関連記事:デジタルトランスフォーメーション(DX)の事例に学ぶ - 推進するメリットや成功のコツ
①経営戦略・ビジョンの設定
今後、予期せぬイノベーションが様々な形で起こると考え、どのようなビジネスモデルを構築すべきか、経営戦略・ビジョンの設定を行っていきましょう。その際には、自社の事業分野にて新たな価値を産み出すため、必要な施策の立案や指示が必要です。
②経営層の積極的な参加
DXでは、ビジネスモデルや企業体制自体の変革まで起こすため、社内でハレーションが発生する可能性は否定できません。そのため、DXの成功には経営層の積極的な参画を行い、チェンジマネジメント※を進めましょう。
- ※チェンジマネジメント:組織の成功や成果に必要な変革に、社員一人一人が上手く適応できるよう準備し、環境の整備や個人のサポートを続けるためのアプローチ
③プロジェクト体制整備
DXの推進プロジェクト体制を整備する際には、以下の3点に注意しましょう。
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- DX推進を後押しするマインドセットを、各メンバーがもつ
- DX推進部門を設置する
- DX人材の育成・確保を行う
「ノウハウや知見がないから動けない」ということがないよう、場合によっては外部パートナーと連携し、1つずつ体制整備に向けて動くことが必要です。
④的確な意思決定
DX推進にあたっては、的確な意思決定が必要です。意思決定の際には、以下の3つのポイントに着目してみましょう。
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- コストカットだけでなく、既存の業界・ビジネスモデルに好影響を与えられるか
- 定量的なリターンやDXの効果予測精度の低さから、取り組みをちゅうちょしていないか
- 投資しなかったことで、他社との競争に負けるリスクを考慮しているか
⑤変化への速やかな対応
今後も社会情勢やビジネス環境は大きく変化していくことが想定されるため、変化に速やかに対応できるよう、柔軟な社内体制を構築することも必要です。例えば、画期的な技術が開発されたなど何らかの変化が生じても、新たな方針に対応できるようシステムの刷新や体制作りを心がけましょう。
⑥全社的なシステム構築体制
全社的なシステム構築には、これらの人材が必要になります。
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- ITシステム全体の設計(アーキテクチャ)を行える人材
- ITを活用したDX推進の戦略立案や施策計画を実行できるできるビジネスサイドの人材
また、経営層よりトップダウンで指示を出しやすい体制をもつDX推進部門を立ち上げ、そこから各連携部署の担当者につなぐ体制を作ることも有効でしょう。
⑦ガバナンス制定
全社的なITシステム構築にあたっては、以下の2点が重要になります。
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- 新規ITシステムと既存ITシステムとの円滑な連携
- 部門ごとにITシステムがブラックボックス化しないよう、業務標準化を前提にした管理体制の確立
ベンダにDXを丸投げはせず、自社でDXを推進した結果、何を目指すか明確にして、その上で意思決定を行いましょう。
⑧各部門のオーナーシップ
DXを進める過程では、ITシステムの構築や体制作りが発生します。これらの取り組みを行う際には、DX推進の足かせにならないよう、各事業部門の事業計画や業務企画を十分に吸い上げることに注意しなければなりません。各事業部門がDXに対して、オーナーシップをもつようにすることで、積極的に事業計画や業務企画を出してもらうよう働きかけましょう。
⑨IT資産の評価
IT資産の価値を適切に評価しないと、レガシーシステムを刷新するタイミングを誤り、大きな損失の源になる恐れがあります。場合によっては、企業や社会に大きな影響を与える恐れもあるため、IT資産を適切に分析・評価することは、重要なポイントとなります。
⑩IT資産の仕分け
IT資産の評価結果を受け、IT資産の仕分けを行います。そのIT資産を残すか刷新するか決定するだけでなく、残すIT資産を全社横断的なデータ活用を目的に使用できるか検討しましょう。場合によっては、残すIT資産であっても、あえて他のシステムと連携させないことも必要かもしれません。
まとめ
DXは、今や世界中の企業で求められており、日本でも多くの企業が取り組んでいます。成功すれば競争優位性の獲得が期待できますが、社内体制整備やDX人材の確保など、課題も少なくありません。
そのため、DXの進め方を正しく理解し、適切な手順を踏んで確実に行っていくことが、DXを成功させるには必要なのです。また、経営戦略・ビジョンの設定やIT資産の仕分けなど、要点を理解すると、より成功する確率を高められます。
なお、インキュデータは多くの企業のマーケティングDXの導入・推進をサポートしてきました。マーケティング分野でDXを活用したい方は、ぜひ一度ご相談ください。