データマートとは?種類・導入のメリット・デメリットを解説 -
データマートは特定の主題や部門に焦点を当てたデータの集積場所であり、データの管理と利用を効率的に行うための重要なツールです。しかし、その種類や運用方法についてよく知らないという人は多いかもしれません。
そこでこの記事では、データマートの概要・種類・導入する際のメリットとデメリットを詳しく解説します。
データマートとは
ここでは、以下の2つの視点から、データマートとは何かについて解説していきます。
-
- データマートとは
- データウェアハウスとの違い
それでは、1つずつ解説します。
データマートとは
データマートとは、データ検証や分析といった特定の目的に対応するために構築されたデータベースのことです。一般的に、データ分析には組織内の情報が統合されたデータウェアハウスが利用され、データマートは特定の利用目的に必要なデータをデータウェアハウスから別のテーブルとして抽出・加工して構築します。そのため、データマートは小規模なデータウェアハウスと見なすことも可能です。
関連記事:データ基盤とは何か? - 基礎知識から必要とされる理由・構築の流れ・ツールの設定について解説
データウェアハウスとの違い
データウェアハウスとデータマートは、どちらも企業がデータを保存・分析・利用するためのデータベースですが、対象となる範囲と目的に違いがあります。
データウェアハウスは、データを保管しておくデータベースのことで、企業全体のデータを集約し、統合・管理するための大規模なデータベースのことです。複数のデータソースからデータを抽出・統合・加工して、企業全体の意思決定や分析に役立てることができます。
一方、データマートは、特定の業務や部門に特化したデータをデータウェアハウスから抽出して提供します。また、データウェアハウスには見られないデータマートの特長として、データ全体の構造の並び替えや削除、追加など、分析の効率化が可能であることが挙げられます。
特定の目的に沿ってデータが整備されているため、元のデータウェアハウスを使ったケースと比較すると、分析速度の向上が期待できます。
関連記事:データレイクとデータウェアハウスの違いを比較!使い分ける方法や導入のポイントも解説
データマートの種類
ここでは、データマートの種類として、以下の3つを解説します。
-
- 従属型データマート
- 独立型データマート
- ハイブリット型データマート
それでは、1つずつ解説します。
従属型データマート
データマートの種類の1つ目は、従属型データマートです。従属型データマートとは、企業全体のデータウェアハウスからデータを抽出し、特定の業務や部門に特化したデータマートを作成する際に、データウェアハウスに依存する形で構築されるデータマートのことです。
データウェアハウスのデータをそのまま利用する従属型データマートは、データの信頼性が高く、構築期間が短くて済むのがメリットです。一方で、データウェアハウスの変更に追随する必要があるため、メンテナンスの負荷が大きくなるというデメリットもあります。
独立型データマート
データマートの種類の2つ目は、独立型データマートです。独立型データマートとは、企業全体のデータウェアハウスに依存せず、特定の業務や部門に特化したデータマートを独立したスタンドアロンで構築したものです。データウェアハウスを介することなく、情報源に直接アクセスします。ETL処理も独自で行います。
独立型データマートは、元データのあるデータウェアハウスの変更に追随する必要がないため、メンテナンスの負荷が軽減されるのがメリットです。ただし、データの信頼性や一貫性を確保するためには、データウェアハウスとデータの整合性を確認する必要があります。
また、独立型データマートを複数構築する場合には、データの重複や矛盾が生じる可能性があるため、注意が必要です。
関連記事:ETLとは? - 概念・関連用語とツール活用のメリット・比較のポイントを解説
ハイブリット型データマート
データマートの種類の3つ目は、ハイブリット型データマートです。ハイブリッド型データマートは、その名の通り独立型データマートと従属型データマートの両方の特性を併せ持つデータマートのことです。
ハイブリッド型データマートとは、従属型と独立型の両方のメリットを取り入れ、一部のデータをデータウェアハウスから取得し、他のデータを直接オリジナルのソースから取得します。
従属型や独立型のデータマートと比べて、よりフレキシブルなデータ分析が行えるという特徴があります。しかし、元となるデータウェアハウスからの影響を受けやすく、分析するたびに外部データを更新する必要があることも理解しておきたいものです。
データマートを活用するメリット
データマートを活用するメリットには、以下の3つがあります。
-
- 実装コストが低減できる
- データの取り扱いが容易で効率化が図れる
- 特定部門のデータ分析が行える
- 実装コストが低減できる
それでは、1つずつ解説します。
関連記事:データマートの設計とは?データウェアハウスとの違い・設計をするための流れまで詳しく解説!
実装コストが低減できる
データマートを活用するメリットの1つ目は、実装に時間も費用もそれほどかからないことです。データマートは企業内の特定の部門やプロジェクトで必要なデータだけを集め、整理、格納する小型のデータウェアハウスです。
そのため、大規模なデータウェアハウスを構築するときのように、設計や実装に長い時間と大きなコストを費やす必要はありません。さらに、データマートは特定のユーザグループのニーズに合わせてカスタマイズでき、データにアクセスしやすいのも魅力です。
また、データマートの活用により、データのセキュリティとガバナンスを強化することも可能です。各データマートは特定のデータセットに対してアクセス制御ができるため、情報が不適切に利用されづらく、規制遵守が確立しやすくなります。
このように、データマートを活用することで、実装時間と費用の削減ができるでしょう。
データの取り扱いが容易で効率化が図れる
データマートを活用するメリットの2つ目は、データの取り扱いが容易で効率化が図れることです。通常、データ分析をする前準備として、分析しやすいようにデータを編集しておきます。
そこで、データウェアハウスを基にデータ分析を行うときは、重要な元データを編集しないよう注意しなければなりません。一方、データマートを用いれば、元データへの影響を気にせずにデータの編集が可能です。
また、単にデータを並べ替えるだけでなく、日次集計データを月次集計データへ変換するといった複雑な操作も簡単に行えます。万が一、不注意でデータを損失してしまった場合でも、元のデータから再びデータを取得することも可能です。
データマートを活用することで繰り返しデータを加工でき、データの扱いが容易になるといえます。
関連記事:データ活用は今や当たり前に!メリットや課題・ビジネスで実施した事例を解説
特定部門のデータ分析が行える
データマートを活用するメリットの3つ目は、特定部門のデータ分析が行えることです。データウェアハウスには大量のデータが格納されているため、詳細な分析には向きません。
一方、データマートは大量のデータの中から必要な情報のみを取り出して分析しやすいのが特徴です。「総務部が月次の予実を管理する」、「営業部が週次データを可視化する」など、特定の部署・部門別のデータ解析がより容易に行えます。
データマートへのデータの取り出しは簡単なSQLで行えるため、企業内のデータエンジニアに依存せずにデータを活用しやすいといえます。各部署・部門ごとにデータの解析結果に基づいた高精度な決定ができるようになるため、納得感を持って施策を前に進めることができるでしょう。
関連記事:データ連携とは?-目的から課題・基盤を構築する方法まで徹底解説
データマートを活用するデメリット
データマートを活用するデメリットには、以下の3つがあります。
-
- 複数構築したときに運用管理が煩雑になる
- 新たな視点を持ちづらい
それでは、1つずつ解説します。
複数構築したときに運用管理が煩雑になる
データマートを活用するデメリットの1つ目は、複数構築したときに運用管理が煩雑になることです。データマートは一部門または特定の目的に対して特化したデータを提供するために作られますが、複数のデータマートを構築すると管理が複雑になるため注意が必要です。
各データマートは、異なる部門や目的のために設計されているため、それぞれが独自のデータ形式・構造・更新スケジュールを持つ可能性があります。そのため、全体の運用管理が煩雑になるだけでなく、データの一貫性と整合性も確保しづらくなります。
また、データマート間でのデータ共有や統合が困難になることも珍しくありません。また、いくつものデータマートの中にデータが重複保存され、更新がしづらくなる可能性もあります。結果的に、データストレージを無駄に消費し、運用コストが増加してしまいます。
複数のデータマートを構築すると、管理の煩雑さ、データの一貫性の問題、ストレージコストの増加などの課題を引き起こす可能性があるため、適切に運用管理の戦略を立てる必要があるでしょう。
新たな視点を持ちづらい
データマートを活用するデメリットの2つ目は、新たな視点を持ちづらいことです。データマートを構築するときには、特定の部門やニーズに焦点を当て、必要なデータを集約・整理しているため、その部門での意思決定やビジネス活動が効率的に行えます。
一方で、その特化性により新たな視点や洞察を見つけ出しにくいというデメリットもあります。アメリカの大手小売業者ウォルマートが売上分析を実施した際、ビールとおむつの売上げが関連していることを発見し、ビールとおむつを店内で隣接して販売することで売上を向上させたという事例はよく知られています。もし、ビールだけのデータ、おむつだけのデータに着目していたとすれば、この洞察は得られなかったでしょう。
データマートの活用でも同じことが言えます。分析に必要なデータを選択し取り出したつもりでも、特定のデータに限定して見ていると、期待する分析結果が得られない可能性があります。
そのため、「データの抽出範囲を少し広げてみる」、「外部のデータソースと組み合わせたハイブリッド型のデータマートを試してみる」など、さまざまなアプローチを検討する必要があるでしょう。
特に、ハイブリッド型のデータマートを構築・運用するには、単純なSQLだけでなく、データエンジニアリングの知識が必要となります。常時複雑な分析を行うわけではない場合は、分析サポートを外注するのも1つの方法です。
関連記事:データ分析の手順を5ステップで解説!主な手法や成功ポイントを理解してビジネスに活用
まとめ
データマートとは、特定の主題や部門に特化したデータの集積場所として、データ管理と活用を効率化するデータベースです。データマートの導入は、データを効率的に管理し、効果的に活用するための重要な手段の1つといえます。しかし、データマートの導入にあたっては、目的に合った種類を選択することが重要です。
また、導入後もデータの品質や一貫性を維持し、データマートを適切に管理していく必要があります。自社のデータをより一層活用するために、本記事を参考にして是非データマートの導入を検討してみてください。なお、インキュデータには企業のデータ活用をサポートした実績が多数あります。ぜひ一度ご相談ください。