INCUDATA Magazine_000235_再確認!リードナーチャリングの正攻法 - 見込み客にアクションを促すプロセスと成功の要点

再確認!リードナーチャリングの正攻法 - 見込み客にアクションを促すプロセスと成功の要点 -

目次

企業をターゲットにしたB to Bマーケティングの手法として「リードナーチャリング」と呼ばれる「見込み客育成」の手法が広く使われ始めています。本稿では、自社の売り上げアップへのマーケティングの貢献度を高めたいと考えるみなさまに向けて、リードナーチャリングの概要から実施の方法に至るまでをご紹介いたします。

リードナーチャリングとは?

「リードナーチャリング」は「見込み客(リード)」を「育成(ナーチャリング)する」という意味の言葉であり、見込み客に自社の製品・サービスの購入意欲を高めてもらうマーケティングプロセス(=マーケティング活動)を指しています。このプロセスの主な目的は、自社の製品・サービスの購入意欲が高い見込み客──言い換えれば、製品・サービスを購入する「確度」の高い見込み客のリストを作り、セールス(フィールドセールスやインサイドセールス*1など)に引き渡すことにあります。

リードナーチャリングのプロセスでナーチャリングの対象となるのは「リードジェネレーション」と呼ばれるプロセスで集めた見込み客です。

リードジェネレーションとは、自社の製品・サービスを売り込みたい相手(ターゲット)の中から当該製品・サービスを購入する可能性のある相手(=見込み客)を探し当て、自社のWebサイトやイベントに集客するプロセスを指しています。一般的な手法は、ターゲットが情報収集のためによく使用している(あるいは、使っていそうな)メディアに対して広告をうち、自社のWebサイトやイベントへの集客を図るというものです。最近ではFacebookやInstagramなどといったSNSを活用したり、コロナ禍においてはオンラインセミナーやYouTube上での動画配信なども積極的に活用されたりしています。

リードナーチャリングは、そのようにして集めた見込み客に向けて自社の製品・サービスに対する興味・関心を高めたり、その製品・サービスの購入を検討したいと思わせたりするためのコンテンツ(記事やセミナーなど)を提供し、見込み客による「製品・サービス資料の請求やダウンロード」「製品・サービスに関する問い合わせ」「製品・サービス関連のセミナーやイベントへの参加登録・視聴」といったアクションへとつなげていきます。

図1:リードナーチャリングの位置づけ

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見込み客が自社の製品・サービスについて十分に理解し、導入に向けて検討を始めた時点で、リードナーチャリングの役目は終わります。その後はナーチャリングされた見込み客に対して個別にアプローチして、商談の機会を設けて交渉を重ね、製品・サービスを購入してもらうといったセールスプロセス(セールス活動)が展開されることになります。

このセールスプロセスのうち「見込み客に個別にアプローチして商談の機会を設ける」までの活動は「リードクオリフィケーション」とも呼ばれ、これは自社の製品・サービスを購入する可能性の高い見込み客を選別していくプロセスであり、従来はフィールドセールスが担うのが一般的でした。今日では、フィールドセールスにリードを引き渡す前の活動としてインサイドセールスやマーケティング部門が担当するケースも増えています。

 


*1 インサイドセールスについては、本サイト掲載のコラム『なぜ必要!?「インサイドセールス」』を参照

リードナーチャリングの実施ケース

リードナーチャリングは、リードジェネレーションとセールスプロセスとの中間に位置し、両者をつなぐ活動です。リードジェネレーションからナーチャリング、そしてセールスへと至るプロセスは、製品・サービスのターゲットが当該製品・サービスの購入を決めるまでにたどる以下のような状態の変化にもとづいて設計します。

①認知:特定の製品・サービスの存在を知る
②興味・関心:その製品・サービスに興味・関心を持つ
③比較・検討:購入に向けて製品・サービスの比較・検討を行い、購入する製品・サービスを絞り込む

このうち製品・サービスの①認知を促すのがリードジェネレーションのプロセスであり、見込み客の②興味・関心を高めて③比較・検討を行う状態へともっていくのがナーチャリングの役割となります。

もちろん、売り込みたい製品・サービスやターゲットの特性、さらには、その製品・サービスのジャンルがターゲットにどの程度認知されているかによってリードジェネレーションやナーチャリングの内容はさまざまです。

例えば、あるIT企業のマーケティング担当者が、自社のIT製品を企業のビジネスリーダーに売り込む場合を想定してください。また、そのIT製品はビジネスリーダーの間では「どのようなビジネス課題を解決しうるのか」があまり認知されていないカテゴリーの製品だとしましょう。
このような場合、リードジェネレーションにおいてIT製品が属する「カテゴリー名」を手掛かりに自社のWebサイトやイベントへの集客を図ることは難しいと思われます。ですので、IT製品が解決する「ビジネス課題」を前面に打ち出して集客を図ることになります。つまり、そのIT製品が解決しうる課題が「コスト削減」であるならば、あなたの会社に「コスト削減の解決策がある」ということをターゲットに認知させ見込み客の集客を図るというわけです。

リードナーチャリングのプロセスでは「コスト削減を実現する上で当該IT製品の活用が有効である」という点を訴求し、製品に対する興味・関心を喚起します。また、製品への興味・関心を持ち、購入を考え始めた見込み客は製品を比較・検討する状態へと移行しますので、そうした見込み客に向けては「自社の製品の強み(競合製品に対する優位性)」を訴求し、購入意欲を高めていきます。

それに対して、例えば「Web会議システム」のように、その製品がどのようなビジネス課題を解決しうるかの認知がビジネスリーダーの間で広く知られているような製品を売り込む場合には「非常に優れたWeb会議システムがある」ということを認知させ、Webサイトやイベントへの集客を図ることがリードジェネレーションのプロセスとなり、ナーチャリングでは自社製品の強みを訴求することに注力すればよいといえます。

このほか、売り込みたい製品・サービスが解決できる課題の存在にターゲットが気づいていないこともあります。この場合は、リードジェネレーションとリードナーチャリングのプロセスを通じて、課題の存在に気づかせ、その課題と売り込みたい製品・サービスを結びつけて興味・関心を喚起することが必要になります。

リードナーチャリングが必要とされる理由 

リードナーチャリングはあらゆる製品・サービスのマーケティングに必要とされる(あるいは、有効な)プロセスではなく、基本的に企業をターゲットにしたB to B製品・サービスのためのマーケティングプロセスです。

商談一件の成立で見込める売上額が高額であり、購入する側が購入の意思決定を下すために多くの情報を必要とするような製品・サービスは、リードナーチャリングを適用するのに向いた商材といえます。とりわけ、製品・サービスのターゲットが広く、セールスをかける相手がどこにいるのかが見えづらい(あるいは、見つけにくい)場合には、リードジェネレーションとナーチャリングの実施がセールスプロセスの効率化に大きく貢献する可能性が高いといえます。

しかし、商談一件あたりの売り上げがあまり見込めない製品・サービスである場合には、リードナーチャリングの実施によって獲得コストがかさみ、割に合わなくなる可能性があります。また、高額の製品・サービスであっても、そのターゲット層が薄く、絶対数が少ない場合には、リードナーチャリングを実施して見込み客の絞り込みをかけるよりも全ターゲットにセールスをかけたほうが効率的であることもあります。

一方、近年ではインターネット上に膨大でさまざまな情報が集中しているために、企業が自社の課題解決に役立つ製品・サービスを自ら探し、購入する製品・サービスを絞り込んでしまうケースも増えています(図2)。そうしたターゲットを早期に発掘し、自社の見込み客として取り込む術(すべ)としても、リードジェネレーションとリードナーチャリングの施策は有効です。

図2:企業は製品・サービス選びをオンライン上で完結させ始めている

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ナーチャリングの手法は一つではない 

リードナーチャリングの手法にもいくつかの種類があります。

一般的なのは、コンテンツ(解説記事やユーザ事例、セミナー、メールなど)を使ったナーチャリングです。この手法では、見込み客の自社の製品・サービスに対する導入意欲がどういった状態にあるかを見定めながら、その意欲を一段向上させるようなコンテンツへの誘導を図ります。例えば、自社の製品・サービスへの興味・関心を持ったと判断できる見込み客に向けては、自社の製品・サービスの優秀さを訴求するコンテンツへの誘導をかけたり、メールを配信したりといった施策が有効です。

コンテンツを使ったナーチャリングでは、MA(マーケティングオートメーション)を使いプロセスの一部を自動化することもできます。MAによる自動化が可能なプロセスの一つは、自社のWebサイト上での見込み客の行動から、その見込み客の製品・サービスの購入意欲を分析してスコアリングすることです。また、見込み客の状態にもとづいて見込み客をセグメント化し、それぞれに読ませたい(ないしは、視聴させたい)コンテンツへの誘導を、メールを使って自動化することも可能です。

リードナーチャリングの手法には、コンテンツを使うのではなくSNSなどのプラットフォームを使った手法もあります。これは、SNSを使用して製品・サービスのユーザ(ないしは、ファン)を中心にしたコミュニティを組織し、そこでの対話を通じて見込み客のナーチャリングを図るというものです。

この手法を成立させるのはなかなか難しく、手法の特性から新製品・新サービスのナーチャリングは(ユーザ自体がいないために)行いにくいといった難点があります。ただし、製品・サービスを実際に使っているユーザの声が見込み客に与える影響は(製品・サービスの売り手が作るコンテンツよりも)大きいといえます。ゆえに、コミュニティを使ったナーチャリングには高い効果が期待できます。

ナーチャリング成功の要点

リードナーチャリングの一般的なプロセスは見込み客の状態にもとづいて展開されていき、リードをセールスプロセスに引き渡すかどうかも見込み客の状態にもとづいて決められます。そのため、見込み客の状態を即時的に捉えることが大切であり、そのためには見込み客の行動データの収集・分析・活用が必要になります。

リードジェネレーションとリードナーチャリング、リードクオリフィケーション、さらにはその先にあるフィールドセールスに至るまで、全てのプロセス間でデータを共有し、各プロセスの洗練化や改善に役立てていくことも大切です。

例えば、リードナーチャリングによって見込み客の製品・サービス購入意欲が本当に高まっているかどうかは、インサイドセールスなどによるリードクオリフィケーションプロセスを通じて見込み客に個別にアプローチしてみるまでは分かりません。つまり、リードナーチャリングが適切に行われているかどうかを判定するには、リードクオリフィケーションプロセスからのフィードバックが不可欠であり、フィードバックにもとづいてナーチャリングに使うコンテンツ内容も含めてプロセスの見直し・改善を継続的に図ることが大切といえます。また、リードクオリフィケーションで見込み客にセールスをかける際には、その見込み客が、どのようなリードジェネレーションの施策に反応し、自社のWebサイトを閲覧しているかどうかやイベントへの参加経験があるかどうか、また、ナーチャリングのプロセスを通じて、どのようなコンテンツを閲覧(ないしは視聴)してきたかの情報を全て把握しておくことが重要となります。このようなプロセス間での情報の連携・共有を円滑に行うために、見込み客ごとの各プロセスでの行動データを一元管理する基盤を整えることが必要だといえるでしょう。

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