インキュデータ 著『ビジネスを成功に導くデータ活用実践ガイド』書籍出版記念!内容の一部をご紹介 -
本記事は、2023年11月7日発売の当社コンサルタントが執筆した書籍『ビジネスを成功に導くデータ活用実践ガイド 顧客体験価値を創造し、向上させるためのデザイン』の内容を抜粋したものです。
掲載にあたり、書籍から抜粋した文章を一部編集しています。
なぜデータの活用が必要なのか
「データは21 世紀の石油」と呼ばれるようになってから早10 年が経ちましたが、未だに日本では企業のデータ活用が遅々として進んでいません。
かつて、プラットフォーマーと呼ばれる事業者が影響力を行使していく中、企業の経営層がデータ活用に乗り出したことがありました。けれども、データ活用の必要性や目的が明確でない中での取り組みは失敗に終わり、データ活用に対するこれまでの企業の取り組みは、失敗例を挙げれば切りがありません。
また、プライバシーやデータ保護に対する個人の意識はより敏感になり、企業には法令を遵守した上でのデータ活用が厳格に求められています。従前と比べてデータ活用のハードルが大幅に上がっているといえます。
企業は失敗を繰り返し、社会的には個人情報の取り扱いに慎重にならざるを得ない状況にもかかわらず、なぜ、企業はデータ活用に取り組むべきなのでしょうか。
最も重要な考え方の一つは、データから客観的に状況を把握し、勘や経験だけに頼らない事実に基づいた意思決定を行うことが挙げられます。本書では具体的なサービスを取り上げて、意思決定におけるデータ分析の必要性を解説しています。さらに、企業が持つ顧客接点をデータ活用によって、如何に変革することができるのか、また、そのための取り組みをどのように推進していくべきか、を中心に説いていきます。
また、第0章から第3章までの章末には、実際にそれぞれの取り組みを進める上で見返していただきたいポイントをチェックリストとして掲載しています。これらの内容をご確認いただき、データ活用を推進する際にビジネスの成果につながるような進め方ができているのかを検証してみてください。
第0章 日本企業のデータ活用の現状と今後の展望
第0章では、なぜ今、企業にとってデータ活用が必要なのか、また、昨今の個人情報保護などデータ活用を取り巻く外部環境について解説しています。
第0章 日本企業のデータ活用の現状と今後の展望
データ活用が生み出す効果を最大限引き出すためには、データを局所的に活用することを目的とはせず、企業として幅広い領域でデータ活用を推進することです(図0.3.1)。そのためには、経営層から現場まで多くの関係者の理解を得なくてはいけません。なぜデータを活用するのかを明確にし、共通の目的に沿ってデータ活用を推進する必要があります。企業としてビジネスをどのように変革していくのかを見据え、データ活用を推進することがビジネスの成果につながるのです。
図 0.3.1 データ活用の効果をとらえる際のイメージ
第1章 目指すべき顧客体験を設計する
第1章では、データ活用に取り組む前に考えるべきビジネスの目的をどのように定めていくべきか解説します。ここでは、「DXを推進せよ」という会社の要望に対し、ある社員が模索する物語を通じて、パーパスの策定から顧客体験価値をデザインするステップを具体的に説明しています。
データ活用、その前に
本書を手に取られた皆さんも、データ活用を推進しつつ、DX 推進プロジェクトに何らかの形で携わっている方だと思います。ここで、皆さんに質問があります。
なぜDXを推進し、データを活用する必要があるのでしょうか?
DX推進は、目的を達成するための手段です。目的を定めずにDX を推進することはできません。
Purpose(パーパス)は日本語では目的や意図を意味しますが、ビジネス上のパーパスには社会的存在意義という意味があります。
一見すると、パーパスとDXおよびデータ活用には何の関係もないように思えるかもしれません。しかし、企業の社会的存在価値であるパーパスをゴールとし、そこに向かうための手段としてDXやデータ活用があるのです。
顧客体験価値の創造に際して重要なポイントは、企業のパーパスと一貫性を保ったものを策定することです。目的を見失わずにデータという手段を使いこなすことで、顧客への提供価値および社会への存在意義をより強固にすることができます。
図 1.4.2 パーパスの因数分解
第2章 顧客体験価値向上に向けた顧客データの統合と分析
第2章では、データを活用するために必要となる顧客データ基盤の構築について解説します。一般的に企業の中では、Webサイトやアプリ、基幹システムなどがそれぞれ個別に顧客データを保持しており、それらのデータは分断されています。顧客体験を向上させるためには、それらの顧客接点を横断したデータの統合が必須となります。そのために必要となる顧客データ基盤を構築する際に注意すべきポイントを中心に解説していきます。
データを分析する前にビジネス要件を出し切ることは不可能
構築段階で、統合されたデータを用いた分析が行われる前に、全てのビジネス要件を明確に定義することは不可能です。実際にデータを触り、分析し、試行錯誤した結果としてビジネス要件は明確になるのであって、それを顧客データ基盤の構築前に要求することは合理的ではありません。よって、初期構築時の厳密な要件定義やシステム設計以上に、早期のリリースとその後の運用の中でビジネス要件を定義し、その実装を機動的に行える体制構築が顧客データ基盤には求められるのです。
図 2.3.2 運用しながら追加要件を開発する流れ
第3章 企業内変革を実現する
第3章では、実際にデータを活用する企業内の組織をどのように構築し、運営していくべきかを解説します。実際に目的を定義し、必要となるデータ基盤を整備したとしても、それを活用するための組織が正しく運営されない限り、ビジネスの成果に結びつけることはできません。そのために必要となるKPIの設計や人材育成について明らかにします。
顧客体験高度化KPIの考え方と関連組織
KPIとは単純に業績を管理するための数値ではありません。その結果を適切に戦略に反映させるための組織的な仕組みとセットになって、効果を発揮するものです。
売り上げにつながる全体施策のKPIは、複雑になるケースがほとんどです。なぜならば、多くの企業でチャネル軸の管理と商品・サービス軸での管理を別々の組織で行っているためです。
事業部門と製造部門や工場が別々の考えを持ってKPI をとらえているために、解決策が定まらずに一つの施策を打つまでに時間がかかってしまうケースがあります。もしくは、企業によっては事業部門が単にWeb広告やECサイトの管理部門になってしまっているケースもあります。それでは事業部門が顧客体験を高度化し、売り上げを向上するために機能しているとはいえません。
KPIとは改善施策に取り組むためのものであると同時に、そのKPIを管理する組織には数字に対する責任が発生します。責任を持つとは最終的な実行の判断を下すということです。KPI と関連して組織のあり方を考えるために、マーケティング部門や営業企画部門と、商品やサービスの企画部門が持つ判断責任の振り分けにフォーカスして、組織構造を整理していきましょう。
図 3.2.5 ①組織合併パターンのメリット・デメリット
第4章 データ活用事例集
第4章では、実際にプロジェクトを推進した企業が、どのような課題を抱えており、データ活用を推進することになったのか。そのプロジェクトはどのように進められたのか。その結果、どのような成果につながったのか。こうした問いに対して答えとなるような三つの事例を紹介しています。
どのようにプロジェクトを推進すれば成功に近づくことができるのか、他社の事例から得られることは多くあります。
掲載企業
- SBI証券様
- 湯快リゾート様
おわりに
本書の中でも触れているように、デジタル化が進みさまざまな顧客データが収集できるからこそ、マーケティング部門に限らず顧客データをいかに事業全体で活用していくのかという視点が非常に重要になってきます。この全体像をデザインし、ビジネスの成果に結びつけることは容易ではなく、非常に難しいミッションだと強く感じています。
我々はそのような重要かつ困難なミッションを成功させるために、データ活用のプロフェッショナルであり、企業のパートナーとして尽力いたします。本書も「アイデアが自走できる 世界をつくる。」という弊社のパーパス実現に則して、データ活用を進めようとされている皆さんの一助となれば幸いです。
著者紹介
飯塚 貴之
(いいづか たかゆき/ソリューション本部 本部長)
外資系ソフトウェアベンダー、コンサルティングファームを経て現職。新規プラットフォーム事業の構想策定、FinTech事業の立ち上げ支援といった企画・構想段階から、データを活用した業務改善、分析基盤構築、スコアリングモデル構築、データガバナンス導入まで幅広く従事。2021年10月よりインキュデータのコンサルティングサービス全般を統括。
河井 健之助
(かわい けんのすけ/ビジネスデザイン部 部長)
データアナリストとしてキャリアをスタートし、仏系広告代理店にて分析を基にしたCRM戦略や、マーケティング戦略策定、データ統合など多岐にわたるプロジェクトをリード。その後、米系クリエイティブファームでは企業の共創パートナーとして新規プロダクト開発や顧客体験設計から、思考プロセスの講師やメンタリングなど幅広い支援を実施。インキュデータに参画後は、本質的課題の定義の部分から徹底的に寄り添うことで、ブランディングから組織デザイン、データを活用した事業デザインなど、アウトプットに囚われない真の意味でのビジネス改革の支援を実施。
岡永 卓矢
(おかなが たくや/ビジネスコンサルティング部 部長)
大手電機メーカにて、製品開発、国内マーケティング、技術営業に従事。半導体の新製品企画から量産までリードし、お客様への提案まで経験。その後、大手コンサルティング会社にて主に電機メーカ向けに事業性評価、業務改革支援などに従事。メーカでの業務知見からマーケティング・セールス・開発の複数の領域で変革をサポート。現在はマーケティングを中心とした、お客様のDX推進パートナーとしてコンサルティングに従事。
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