MA(マーケティング・オートメーション)の概要は? - メリットや注意ポイント、活用の仕方 -
市場の成熟や商品のコモディティ化により、競合他社との差別化が難しくなっています。その中で多くの企業から自社を選択してもらうには、これまで以上に顧客との密接なつながりが欠かせません。そこで重要となるのが、いかに顧客ごとに興味・関心のある情報をタイムリーに届け、信頼される関係性を構築していくかです。
今回はマーケティング施策を効率化し、見込み顧客の創出や育成を可能にするMAについて、そのメリットとデメリット、効果的な活用方法をお伝えします。
MA(マーケティング・オートメーション)の特徴や機能
MAという言葉を聞いたことはあっても、実際にどのような機能を持ち、何を実現するのかについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、そもそもMAとはどういったツールなのかを紹介した上で、主な機能やMAを使ってできることについてお伝えします。
MAとは?
MAとはMarketing Automationの略称で、企業のマーケティング活動を自動化させるための施策やツールのことです。自社に対して資料請求やホワイトペーパーのダウンロード、セミナー参加などのアプローチがあった潜在層を主な対象とし、見込み顧客の育成を図ります。
具体的には、顧客の性別・年齢・職業・居住地域・趣味嗜好などといった属性に合わせ、最適なマーケティングをメール、チャットツール、またはアプリプッシュ施策などによって実行。さらに、そこから結果を予測し、マーケティング効果を最大化させるまでの流れを自動化できます。
MAに備わっている機能
サービスやマーケティング対象によっても異なりますが、MAには主に次のような機能が備わっています。
1.リード管理機能
属性情報や自社サイトのページ閲覧情報、メールなどの配信履歴および配信に対する反応など、自社サイトやMAで使用するコンタクトポイントから得られる顧客情報を一元で管理する機能。
2.スコアリング機能
顧客情報をもとに、行動や興味関心度をスコアで表す機能。
3.キャンペーン管理機能
顧客に対し、属性や行動履歴に合わせて最適なアプローチを行うための機能。
4.メールマーケティング機能
顧客の属性や行動履歴をもとに適切なメールマーケティングを行うための機能。
ほかにも、ランディングページ作成支援。SNSマーケティング支援、フォーム作成支援などもMAの主な機能として挙げられます。
MAが実現できること
見込み顧客を群としてではなく個として扱える点も、MAの特徴です。今までは名刺やメールアドレスなど顧客情報を取得しても、その全員に対して同じような施策を行うのが一般的でした。
しかし、MAを活用すれば、顧客の状況に応じてきめ細やかなマーケティング施策が可能です。また、多くの業務が自動化されるため、手間をかけずに効率的かつ適切なマーケティング施策の強化が実現します。
MAとCDP、CRM、SFAの違い
マーケティング施策の強化、効率化を行う機能を持ったツールはMA以外にもいくつか存在します。ここではMAとよく混同されがちなCDP、CRM、SFAとMAの違いについてまとめました。
MAとCDPの違いとは
CDPとは、Customer Data Platformの略称で、デジタルとリアルそれぞれの顧客情報を収集・統合・分析するプラットフォームを指します。プラットフォームのため、ツールではなく企業が持つデータの基盤と言えるものです。
CDPはオンライン・オフラインを含めたすべての顧客フェーズのデータを蓄積・統合・分析するため、顧客を包括的にとらえることができます。例えば、MAを活用する上で、同じ顧客であってもデジタルとリアルそれぞれで行動履歴がある場合、前段としてCDPがそれらの行動履歴をユーザ単位で統合し、MAに渡すことで効果的なマーケティング施策が実施できます。つまり、CDPはMAをサポートする役割を担い、MAの効果を最大化させるために欠かせない情報基盤といえます。
MAとCRMの違いとは
CRMとは、Customer Relationship Managementの略称で、顧客との継続的な関係性を構築するためのツールです。これだけだとMAと同じものと思われるかもしれません。MAとCRMが異なるのは、ターゲットとなる顧客層です。
CRMは、既存顧客を主なターゲットとしています。すでに自社を認知しているもしくは購入経験がある顧客に対し、継続的に自社商品を購入してもらうための関係性構築が目的です。これに対しMAは興味関心段階の見込み顧客に対し、自社商品の購入を検討してもらえるようにアプローチすることが目的のツールです。
MAとSFAの違いとは
SFAとは、Sales Force Automationの略称で、営業活動を支援するためのツールです。見込み顧客や既存顧客などの属性情報に加え、これまでの営業活動の履歴、顧客の反応などをデータベース化します。
MAと最も異なる点はツールを扱う部署の違いで、MAを活用するのは主にマーケティング部。そして、SFAはMAを活用して育成された見込み顧客から、実際の商談につなぐために主に営業部が活用するツールです。
MAを導入するメリット
MAは、マーケティング効果の最大化を支える重要な要素を持った施策です。ここからは、実際にMAを導入すると、どのようなメリットがあるのかについて見ていきましょう。
見込み顧客の管理がしやすい
現在インターネットの普及率が上がり、企業はデジタル・リアル問わずさまざまなデータの取得が可能となりました。しかし、それぞれの場で取得したデータがバラバラでは有効活用もままなりません。
MAを導入すればリード情報はもちろん、その後の行動履歴も把握できます。さらに、行動履歴をもとにスコアリングができ、見込み顧客の最新の状態を管理できることが特徴です。
一人一人の特性に合わせたマーケティングを実施できる
見込み顧客の育成を行うためには、一人一人の特性に応じた適切なアプローチが欠かせません。しかし、MAがなければいつ誰にどのようなアプローチを行えばよいかが分からず、画一的なアプローチとなるでしょう。
MAを導入すれば、見込み顧客一人一人の行動履歴をもとに、自社に対して今どういった温度感であり、どのような情報にアクセスしているかであるかが可視化できます。これにより、顧客それぞれの特性に合わせた最適なマーケティング施策の実施が可能です。特性に合わせたマーケティングによって、見込み顧客の興味は高まりやすくなり、高い顧客満足度を維持できるでしょう。
MAを導入する際の注意ポイント
込み顧客の管理、育成においてさまざまなメリットを持つMAですが、導入には少なからず注意すべきポイントも存在します。具体的には次の2点が挙げられます。
完全に自動化できるわけではない
MAは見込み顧客の育成を行う上で多くの機能を自動化します。これもMAを活用するメリットの一つです。ただし、注意すべきは完全自動化を実現するものではない点です。
例えば、スコアリング機能において「自社のWebサイトへの訪問」「メールマガジンの登録」「資料請求」など、それぞれ何点を付与するのか。そして得点別にどのようなマーケティング施策を実行するのかといったシナリオ作成や届けるメッセージは、自分たちで行わなくてはなりません。
MAを運用できる人材が必要となる
マーケティング施策のシナリオ作成は自分たちで行う必要があります。最初に作成したシナリオでうまくいく場合もあれば、思ったような成果が出ない場合もあるでしょう。MAは基本的にシナリオ作成、実施、検証、改善の「PDCA」を回しながら効果を高めていくツールです。
そのため、MAの効果を最大限に発揮させるには、MAの機能や効果を把握し、適切に扱える人材が不可欠です。自社内で育成もしくは外部からの登用をしない限り、思ったような効果を出すのは容易ではありません。
企業がMAを活用するためのポイント
MAの概要、メリット・デメリットを把握した上で、どのようにMAを扱えば成果を上げられるかを検討することが重要です。ここでは、企業がMAを活用し、成果を上げるために必要な4つのポイントを紹介します。
リードを創出する
MAを活用するにあたって、リードの創出がなければ見込み顧客は育成できません。ランディングページの作成や登録しやすいフォームの作成などによる新規リード獲得に加え、リードの掘り起こしも実施します。
展示会で収集した名刺やWebアンケートに参加してくれた中で、アプローチ漏れがあれば、業界最新情報や商品活用Tipsなどのコンテンツを提供してアプローチし、興味関心のスコアリングを実施してみましょう。
コンテンツを用意する
見込み顧客に継続して興味を持ってもらい、商談を実現させるためには、一人一人の特性に合った適切なコンテンツ提供が必須です。各々の特性を理解し、状況に応じたコンテンツを作成する。その上で顧客が求めるタイミングで求めるコンテンツを提供し、満足度を高めていく必要があります。
常に顧客の行動を注視し、今、何を求めているのかを把握した上で最適なコンテンツの提供を行うのは、MAが最も得意とする分野です。適切な活用で大きな効果が期待できるでしょう。
リードの管理を徹底する
商談成約の確度を上げるためには、リード管理の徹底が欠かせません。「自社Webサイトに何度か訪問した」「資料請求やメールマガジン登録をした」「製品のデモ版をダウンロードした」など、行動履歴によってリードを分類し、それぞれ管理を行います。
また、リード育成は基本的にマーケティング部門が担当しますが、スコアリング機能を活用し、一定のスコアを付与した見込み顧客のデータは営業部やインサイドセールス部門に引き渡します。マーケティング部と営業部間の連携がうまくいくと商談成約の確度はさらに上がるでしょう。
CDPと連携して活用する
MAとCDPの違いで説明したように、MA単体で自社が持つあらゆる顧客データを統合するのは困難です。成果を高めるためには、CDPとの連携が欠かせません。
CDPを活用し、顧客データを統合・整理することで、分断されていた顧客の行動パターンやニーズを把握しやすくなるでしょう。MA以外の自社のオンライン・オフライン接点での顧客データを繋ぐことで、より効果的なマーケティングが可能になります。
MA導入がマーケティングを加速させる
多くの業種で人材不足が進む中、限られた人数で最大の効果を生み出すには業務効率化が欠かせません。MAは、従来であれば多くの手間を要した見込み顧客の育成に関する業務を自動化でき、少人数でも大きな効果を発揮できるツールです。
多くの顧客データを取得したものの活用できていない、資料請求はされるが購入にまで至らないといった悩みを抱えているのであれば、MAの導入は効果的でしょう。
さらに、顧客の解像度を上げ、顧客ごとに応じた適切なコミュニケーションを届けるために、企業の持つあらゆるデータを統合・管理、分析しエンリッチ化できるCDPとの連携をおすすめします。
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