INCUDATA Magazine_000156_営業支援のためのデータ活用術 - 営業のデジタライゼーションを実現する方策

営業支援のためのデータ活用術 - 営業のデジタライゼーションを実現する方策 -

目次

営業活動は、会社の収益に直結した業務プロセスです。これをデータとITシステムによってどう支援していくかという方策についてご紹介いたします。

営業支援のシステムとは?

営業活動をデータとITによって支援するという考え方は古くからあり、すでに多くの企業が営業支援システム──つまり、SFASales Force Automation)を導入しています。

SFA、営業活動の効率化のために、顧客情報管理や案件管理、見積書・契約書・営業日報の作成支援などの機能を提供する仕組みです。SFAを用いることで、「誰が、どの顧客に対して、何を、いくらで売ろうとしているのか」「その案件(商談)が成立して受注に至る確度はどの程度か」といった情報を、営業部門内で共有することが可能になります。

これにより、部門の売上目標(予算)に対する達成見込みがリアルタイムに捉えられるようになり、結果として、部門目標の達成に向けて各人が何をどうすべきかの判断もデータに基づいて合理的に下せるようになります。

また、SFAでは顧客情報に紐づくかたちで案件情報が蓄積され、管理されます。そのため、顧客ごとにその顧客がリピート顧客なのか休眠顧客なのかを把握するのも容易になります。

さらに、近年では、SFACRMCustomer Relationship Management:顧客関係管理)とのシステム統合も進んでいます。

CRMは元来、営業支援のために作られた仕組みではなく、既存顧客との関係を強化して、個々の顧客からより多くの売上を獲得するというマーケティング施策を支援するための仕組みです。既存顧客の情報を管理して、個々の顧客の特性に合わせた販促活動を展開し、リピートオーダーを獲得しやすくするのがCRMの本来的な役割といえます。

CRMはマーケティングに特化したシステムなので、見積書作成支援や営業日報作成支援など、営業の事務処理を効率化する仕組みは備えていません。マーケティングのキャンペーンを管理したり、データを基に顧客をセグメント分けして、販促メールを送信したりする機能を備えているのが一般的です。また、個々のマーケティング施策にどの顧客がどう反応したかを管理するのもCRMの役割です(図1)。

1:CRMとSFAの役割の違い

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CRMSFAの統合が進んだ理由

では、なぜCRMSFA 統合が進んだのでしょうか。

CRMSFAの統合が進んだ理由の一つは、BtoBビジネス(企業向け事業)を展開する企業間で、マーケティング活動を通じて得られた顧客データを、営業活動の効率化に役立てようとするニーズが高まったためです。

例えば、SFAで管理される顧客情報は、顧客の基本属性と営業活動に対する顧客の対応履歴が中心となるため、それだけでは顧客の趣味趣向までは把握できず、新商品をリリースした際に営業をかける相手として誰が適切かを正確に判断することはできません。結果として、新商品へのニーズが全くない相手に営業をかけるという無駄が発生する可能性が高まります。

そこで必要になるのが、マーケティング部門が管理している顧客ごとのマーケティングデータ──具体的には、商品の販促施策において、顧客がどう反応したか、といった情報です。そうした情報を必要なタイミングで共有できれば、営業部門で見込み顧客を絞り込み、営業活動を効率的に展開することができるようになります。

こうした考え方が、マーケティング部門と営業部門の顧客情報を一元化するという考え方につながり、CRMとSFAの統合を推し進めたといえます

営業支援で高度化するBtoBマーケティング

CRMとSFAの統合は、マーケティング施策を通じて得られた顧客情報を営業の効率化に役立てる一手といえます。すでにBtoBマーケティングの潮流としては特定の商品/サービスを購入する可能性の高い顧客の情報を「セールスリード」として営業部門に引き渡すという段階に至っています。

イベント出展/主催などのマーケティング施策で集めた名刺情報を、セールスリードとして営業部門に引き渡すといった手法自体は古くから展開されてきました。

ところが、この“リード施策”の場合、「名刺情報」に紐づくコンテキストとして「イベントの自社ブースに立ち寄った」「自社のイベントに来場した」という情報しかなく、名刺情報を渡された営業部門としては、リード情報としてのプライオリティの判断がつかず、営業活動を行うべきかどうかで迷いが生じます。そして結局は、名刺情報が営業活動に使われずに終わるケースも多くありました。

そのため今日では、イベントへの参加も含めて、自社のWebサイト上での行動や販促メールに対する反応など、さまざまなデータに基づきながら、自社の製品/サービスに対する顧客の購入意欲をスコアリング(計測)して、スコアが一定のいき値を超えた段階で、その顧客情報をセールスリードとして引き渡すといった手法が普及しつつあります。

また、自社のWebサイトやイベントに呼び寄せた見込み客に対して、MA(Marketing Automation)ツールを使った「リード育成(リードナーチャリング)」の手法を適用し、製品/サービスに対する興味・関心の状態を見据えながら、適切なコンテンツへの誘導を図り、購入意欲を高め、製品/サービスに対する問い合わせや販促用資料のダウンロードといったアクションにつなげてリード化するといった施策も一般化し始めています。

セールスリードが使われないリスクを回避する方策

もっとも、リードナーチャリングの手法を使ってマーケティング部門が取得したセールスリードであっても営業部門の活用に至らない場合もあります。

その要因としてよく見受けられるのは、マーケティング部門から営業部門にセールスリードとして渡された顧客リストの大多数が、営業部門がすでに営業をかけている顧客であるというケースです。

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いうまでもなく、これはマーケティング部門と営業部門との情報共有が不完全で、マーケティング部門と営業部門の日々の活動が互いに見えていないことで引き起こされる問題です。また、マーケティング部門と営業部門の活動が互いに見えていないと、マーケティング部門が引き渡したセールスリードが、営業部門内でどう扱われ、案件受注にどのように貢献したかすら、マーケティング部門からは見えなくなります。結果として、マーケティング部門は、リード獲得のために展開している施策が適切かどうかの判断が下せなくなります。

このような問題を解決するには、もちろん、顧客を軸に、マーケティング部門と営業部門の情報を統合して共有することが必要になります。その上で、マーケティング部門と営業部門が一致協力してリード獲得から案件獲得のための施策を展開することが理想といえます。

実際そうすることで、例えば、営業部門(フィールドセールス)では手の回らない休眠顧客層にマーケティング部門がアプローチし、潜在ニーズを喚起するといった、より戦略的なリード獲得の施策展開が可能になります。また、商談成立に至った顧客が、自社のWebサイトやマーケティング施策に対して、どのような行動をとってきたかを遡りながら、リード育成の成功パターンを見つけられる可能性も膨らみます。

一方、セールスリードを営業部門が使おうとしないもう一つの要因として考えられるのは、営業部門(フィールドセールス)の手が足りず、リードになかなかアプローチできないケースです。

現在、この問題を解決する方法として、セールスリードに直接コンタクトをとり、プリセールスを展開する営業部門(インサイドセールス)を組織化するという方策がとられています。この方策は、インサイドセールスがリード情報をもとに見込み客にアプローチして商談の場をセットするところまでを担当し、営業部門(フィールドセールス)に商談を引き継ぐというものです。会社によっては、インサイドセールスが商談のクロージングまでを受け持つ場合もあるようです。

インサイドセールスは、見込み客を訪問することなく、電話やビデオ会議、あるいは営業支援ツールを使って見込み客にアプローチします。そのため、効率的なアクションが可能となり、自社のマーケティング施策に対する見込み客の動きに即座に反応できるといったメリットもあります。

さらに今日、労働人口減少の影響もあり、フィールドセールスの人材不足・人手不足が進行し、その営業効率をいかに高めるかが多くの企業にとって経営課題の一つとなっています。そのため、フィールドセールスの代わりに見込み客にアプローチし、商談のお膳立てをするインサイドセールスへの期待が膨らんでいます。

マーケティングと営業の最適化に向けて

顧客を軸に、リード獲得に関するマーケティング活動のデータや、インサイドセールス、営業部門(フィールドセールス)の活動データを一元的に管理することで営業プロセス全体を可視化し、各商談ステージでの商談の滞留や顧客の脱落率の分析が可能になります(図2)。これにより、インサイドセールスの効率性を高める上で有効なリード情報とは何かから、フィールドセールスが数値目標を達成するためのクリティカルポイントがどこにあるかに至るまで、営業を支援するさまざまな情報を把握することが可能になります。

BtoBマーケティングの潮流は、営業を支援する顧客情報、あるいは営業の効率性を高めるための顧客情報をいかにして作り上げるかに向かっています。そうしたマーケティングと営業の活動全体を最適化し、営業力を強化していくカギは、マーケティングと営業の垣根のないデータの共有化と有効活用にあるといえます。

図2:営業プロセス全体をデータで可視化するイメージ

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こうした考え方が、マーケティング部門と営業部門の顧客情報を一元化するという考え方につながり、CRMSFA 統合を推し進めたといえます。

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