日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 顧客理解の深化で KFCが目指すマーケティングの変革
〜日常的に利用されるフードサービスを目指し、各チャネルデータを統合して
最適なコミュニケーションを促進〜
全国に1,000以上の店舗を展開し、数多くのファンを擁する日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社。同社は創業50周年の節目の年である2020年度(2021年3月期)に過去最高の売り上げを記録し、現在はデジタルとデータの活用を経営戦略の1つとして位置づけ、CDP(Customer Data Platform 顧客情報基盤)による顧客データの統合・活用にも乗り出しています。CDPによる顧客データの統合・活用によってマーケティングのあり方をどのように変革しようとしているのでしょうか──。戦略の全容をご紹介します。
Contents
- 次の50年に向けてデジタル・データのさらなる活用へ
- KFCによるデジタル活用の軌跡
- CDPが必要とされた理由
- CDPによる顧客データ統合の実践
- インキュデータ採用の効果とは
- CDPの活用を顧客体験の良質化へとつなげる
次の50年に向けてデジタル・データのさらなる活用へ
1970年創業の日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社(以下、KFC)は、日本の誰もがその名を知るといっても過言ではないほどのブランド力と数多くのファンを有する外食チェーンです。近年の業績も堅調で、2018年度(2019年3月期)以降、右肩上がりで業績を推移させ、創業50周年の節目の年に当たる2020年度(2021年3月期)には1,440億円という過去最高売り上げを達成しています(図1)。
この背景要因について、KFC 広報課 課長の野口 竜也氏は次のように明かします。
「KFCはもともと店舗売り上げの約7割がテイクアウトで占められる業態ですが、2020年度は、巣篭もり需要の高まりもあってテイクアウトとドライブスルー、デリバリーサービスが急激に伸び、業績につながりました」
加えて、2018年度からの3ヵ年計画(中期経営計画)で「原点回帰」を打ち出したことも売上増進にプラスに作用したと野口氏は続けます。

図1:KFCのチェーン売上高推移(単位:億円)
「2021年度-2023年度 中期経営計画」
「原点回帰とはチキンのスペシャリストとしておいしさ・安心・安全をさらに追求するためにQuality(商品の品質)』『Service(サービス)』『Cleanliness(清潔さ)』『Hospitality(おもてなしの心)』を徹底し、お客さまの店舗体験・サービス体験を高めることを意味します。この方針に則った店内活動がコロナ禍によっ て衛生意識を高めたお客さまの心に響き、KFC商品の購買意欲を引き上げたと見ています」
KFCはすでに次の50年に向けて動き始めており、2021年4月に公表した新中期経営計画では「KFCをエブリデイブランドへ」「もっと近くに、より快適に」「安全・安心なおいしさの追求」といった目標を掲げています。
「KFCのファンを増やしさらなる日常化を目指すために『オリジナルチキン』を中心とした商品の磨きこみや、あらゆる場面、時間帯にあった商品やサービスの展開が新中期経営計画における大きな目標です。それに向けて、ランチメニューの拡充や若い世代やビジネスパーソンに楽しんでいただけるようなボリューム感のあるサンド商品などのチャレンジを進めていますし、店舗数の増強も計画されています」(野口氏)
これらの施策と併せて、新中期経営計画における重要な施策として位置づけられているのが、デジタルとデータの有効活用です。つまり、KFCを生活者が日常的に使う、身近で快適なフードサービスへと変容させる一手として、デジタルとデータのさらなる有効活用が推し進められているというわけです。
KFCによるデジタル活用の軌跡

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
広報CSR部 広報課 課長
野口竜也 氏
KFCでは従来からマーケティングやCRMでのデジタルの活用に意欲的に取り組んできました。TV CMなどのマス広告だけではリーチできないターゲット層との接点やコミュニケーションを、公式アプリやSNS、メールマガジンなどのデジタルメディアによって拡張・高度化する施策を展開してきたわけです。
すでにKFC公式アプリは累計ダウンロード数が2,100万件を超え、KFCのTwitter公式アカウント(2010年開設)のフォロワー数も196万人に達しています。加えて、LINE公式アカウント(2012年開設)の総お友だち数も外食業界ナンバーワンの2,420万に上っています※。
- 2021年12月末現在
さらに、KFCではKFCアプリを2021年2月に刷新しました。この刷新によってKFC商品の最新情報や最寄り店舗の情報をより見やすくしたほか、マイレージプログラム「チキンマイル」の貯めやすさを改善し、クーポンの種類も増やしています。さらに、LINE・KFCカード・Pontaカードとの連携やネットオーダー、デリバリーサービスを受け付ける機能も追加しています。そして、何よりも重要なポイントが、会員登録とログイン機能を追加したことです。その狙いについて、KFC マーケティング部 CRM推進課 部長代行の濱嶋 保樹氏は次のように語ります。
「従来のKFCアプリは会員登録の機能を持っておらず、お客さまはスマートフォンの機種を変更するたびにID・パスワードを一から設定し直す必要がありました。それが今回の刷新によって、会員登録をすると、機種を変更しても同じID・パスワードでログインが行えるようになりました。それを機に、KFCアプリの顧客IDと、従来からあるKFC会員(カーネルクラブ)の会員IDを“KFC ID”として統合し、サービス共通のIDを軸にお客さまのデータを統合していく環境を整備しました」
CDPが必要とされた理由
上記のようなデジタル施策を展開するなかで大きな課題となったのが、サービスごとに顧客データが分散化し、顧客行動の全体をとらえるのが困難になったことです。
「お客さまと当社とを結ぶ店舗(POS)やKFCアプリ、SNS、メールマガジン、Webサイト、Ponta会員カードなどのシステムには、お客さまの行動データが日々蓄積されていきます。ただし、それらのデータを管理する“箱”──つまりは、データベースシステムがそれぞれ異なっていました。ゆえに、個々のお客さまがKFCのサービスをどのように使っているのかを俯瞰してとらえることが非常に難しい状態にあったと言えます」(濱嶋氏)

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
マーケティング部 CRM推進課 部長代行
濱嶋 保樹 氏
こうした課題を解決する手段として同社が選んだのがCDP(Customer Data Platform)による顧客データの統合であり、活用です。
「CDPという1つの“箱”に、顧客ID(KFC ID)を軸にお客さまに関する全てのデータを統合していくことで、例えば『KFCアプリ利用者の誰が、どういった頻度で、どの店舗のどの商品を、どういったサービスを利用してどの時間帯に購入しているのか』、あるいは『お客さまが、何をきっかけにその行動をとるに至ったのか』といったことが見えるようになると考えました。それが見えるようになれば、特定のお客さまの購買頻度や購買単価を上げるために、どのようなマーケティング施策が有効かの仮説を立てて実行し、検証してチューニングするPDCAサイクルが回せるようになります。これまでのマーケティング施策は過去の販売データやアンケート調査の結果、さらには経験値に基づいて実行されるのが通常で、それでは施策が成功しても再現性が低く、失敗してもそのインサイトを見出すことが難しい状態でした。CDPによる顧客データの統合と活用で、そうしたマーケティングのあり方も変革したいと考えました」(濱嶋氏)
この言葉を受けて、KFC マーケティング部CRM推進課の松木 瑞恵氏はCDPの採用について次のような説明を加えます。
「私たちが目指しているのは、お客さまによるKFC利用の日常化です。CDPを使って、お客さまに関するあらゆるデータを一元管理すれば、お客さまへの理解を深めるためのデータ分析が可能になり、KFC利用の日常化を促進するヒントが得られると期待しました。加えて、CDPに全ての顧客データを集約することで、お客さまに関して、私たちがどのようなデータを保持しており、そこにどのような活用の可能性があるかも見えてくると考えました」
CDPによる顧客データ統合の実践
CDPの導入に乗り出したKFCでは、いくつかのCDP製品を検討した結果として「Treasure Data CDP」を選定しました。Treasure Data CDPが多様な業種・業態での使用に対応していたことや、外部システムとのデータ連携を実現するコネクタが豊富に用意されていることなどが理由です。そのTreasure Data CDPを使ってKFCが構築を進めた顧客データの統合・活用基盤のイメージは図2に示すとおりです。
濱嶋氏によれば、Treasure Data CDPによる顧客データの統合・活用基盤の構築に当たっては、マーケティングに活用できる全ての顧客データを統合の対象としたといいます。また、データ分析・可視化のための標準ツールとしてTableauを使用しているほか、顧客のセグメントごとにロイヤリティプログラムやクーポン配信、LINE配信、広告配信、プッシュ通知、さらにはWebサイト上でのレコメンデーションといったマーケティング施策を展開していく仕組みが整えられています。
KFCでは2021年10月にTreasure Data CDPで構築した基盤と、各種データ(ソース)との連携を完了させています。以降は、商品キャンペーンの企画化を担うマーケティング担当者と協力しながら、Treasure Data CDPを活用したマーケティング施策のPoC(Proof of Concept 概念実証)に力を注いでいると濱嶋氏は明かします。
「PoCについてはデータ連携の作業が完了する前にも実施しており、2021年夏には『前年までは夏季限定商品をよく購入していたにもかかわらず、今夏は一度も購入していないお客さま』に向けて、その商品の存在をリマインドするPoCを行いました。こうしたPoCによって有効な顧客のセグメンテーションを見出していくことは、のちにつながる大切な取り組みであると感じています」
インキュデータ採用の効果とは

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
マーケティング部 CRM推進課 係長
松木 瑞恵 氏
KFCでは、Treasure Data CDPの導入に当たり、導入支援のパートナーとしてインキュデータを採用しています。というよりも、インキュデータによる導入支援があったことが、Treasure Data CDPを選んだ最大の理由だったと濱嶋氏は振り返ります。
「当社にはデータをマネジメントできる専門職が不在で、CDP導入に当たってはデータ統合の専門的なところを担ってくれる外部のパートナーが必要でした。しかも、インキュデータはCDPを使った基盤構築のみならず、データの運用やデジタルマーケティングの施策に関しても豊富な知見を有しています。そのため、CDPを使ったCRMの戦略策定なども広範にサポートしてもらえると考えました。実際、インキュデータの支援がなければ、今回のCDP導入プロジェクトは前に進まなかったかもしれません」(濱嶋氏)
濱嶋氏によれば、インキュデータはCDP導入の社内稟議を通す段階からサポートを展開し、CDPに対するKFC内の理解を促進する支援をさまざまに提供したといいます。また、CDPによる基盤構築に際しては、顧客データの管理を担う経営企画部や情報システム部門といった関係部門との協業も必要とされますが、インキュデータでは関係部門ごとに担当者をアサインし、全体のタスクをとりまとめて進行をコントロールしていきました。
「こうした関係部門とのタスクを滞りなく進行させるのは簡単なことではありませんが、インキュデータはコロナ禍によって非対面のコラボレーションを余儀なくされたにもかかわらず、全てを適切にコントロールしてくれました」(濱嶋氏)
さらに松木氏も、インキュデータの貢献をこう評価します。「私たちのようなマーケティング担当者にとって、CDPには聞きなれないシステム的な専門用語も多くあります。インキュデータはそうした不明点をマーケティングの用語などを使って説明してくれるので助かりました。インキュデータにCDPの導入だけではなく、CDP運用後のことも一緒に考えてもらえる関係が築けたのは本当に良かったと感じています」(松木氏)
CDPの活用を顧客体験の良質化へとつなげる
濱嶋氏はCDPで構築したデータ統合・活用の基盤を、マーケティングの強化に活かすだけではなく、顧客体験の良質化に活かすことを視野に入れています。
「おそらく今後も、顧客のライフスタイルや購買スタイルはさまざまに変化し、デバイスのテクノロジーはどんどん進化していくはずです。そうした変化の中で、KFCの顧客体験を高めるためにデジタルのタッチポイントとデータをどのように使っていくかを見定めることが、KFCにとっての大きなテーマであると認識しています」と濱嶋氏は語り、こう続けます。
「今回のCDP導入によってデータ活用による顧客体験の良質化に向けた第一歩は踏み出すことができたと考えています。この一歩を着実に前に進めることが大切で、その取り組みの中でインキュデータのさらなる支援も期待しています」
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